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第五章 資料編 女性のあゆみ

あとがき

かみふらの「女性史をつくる会」会員一同

 平成七年の年明けと共に「かみふらのも二年後は開基百年……」の声が聞かれるようになった時、漠然とながら「いつかは自分たちの手で女性の郷土史をつくりたい」と考えていた予[かね]てからの思いが、俄[にわか]に行動へと移り始めました。
 そして四月、教育委員会の配慮で生涯学習の一環として受け入れていただき、マイプラン・マイスタディ講座で「女性史とは」 の学習から始めることになりました。先ず郷土を知る事からと、町の古老を招き上富良野の今昔について学び、編集のノウハウについて女性史研究家、また女性史の編集に携わられた方々を招いて四回の講座を終えた十月、受講者のうち七人の賛同により、かみふらの「女性史をつくる会」を結成しました。
 年齢も職業もまちまちの素人七人「とにかくやってみよう!」の意気込みだけでしたが、町の図書室に依頼し、伝[つて]を辿り、道内既刊の女性史を何冊か借り受け参考にしながら、内容の組立てや取材リスト作成などの準備過程の中で、女性史にはいろいろな考え方や書き方があり、その定義にこだわらなくてもいい事を知り、私たちなりのものをつくろうと言うことになりました。
 手造りポスターや町の広報を通して、会員の募集を始め取材への協力、寄稿の呼びかけもしながら、平成八年三月、七人が二グループに分かれて聞き取り訪問などの活動を始めました。準備不足もあり不安なスタートでしたが、不馴れな私たちを温かく受け入れて、再三の聞き取りや執筆にも快く応じて下さり、自発的に寄稿して下さった方もありました。そうした方々の一言半句[いちげんはんく]に、生きた証[あかし]があり時代が感じられ、郷土の歴史そのものとして重く受け止めました。現代からは想像もつかない厳しい半生を歩んで来られた人たちが、表情も明るく穏やかに淡々とその道程[みちのり]を語り「今はしあわせ・有難い」と結ばれる言葉に何かホッとさせられ、共に笑い涙しながら感動に浸る日々でもありました。
 この素敵な先輩に、むしろ励まされながら楽しく取材させていただいた事は、終生忘れることなく私たちの心に刻まれて行くことでしょう。そして先輩たちが築いてくれた郷土を誇らずにはいられません。
 こうして一年余の取材を終え、五十人と十三団体の記録をまとめ、第一章開拓編−女性のくらし−・第二章激動編−女性の戦中戦後−・第三章団体編−女性の団体活動−・第四章個人編−女性の職業−・第五章資料編−女性のあゆみ−として収録しました。当初は、より多くの方にと考え一人三ページ程度を予定していましたが、実際に取材する中で、上富良野一世紀を歩んで来られた人たちの歴史を、とても三ページに端折[はしょ]るのは忍びなく、そのままをお伝えする事にしました。
 また、この「女性史」は素人の私たちが、自分たちに受け継がれてきた先輩(祖母や母)の生活記録や聞き書きをまとめたものですから、当然の事として粗密や偏[かたよ]りがあることは否[いな]めません。聞き手の聞きちがいや早のみ込み、書き手の書きちがい・書き過ぎ・書き足りなさ、適切でない表現や正確でない部分、また語り手の記憶ちがいもあるでしょう。慎重を期したものの校正ミスもあると思います。しかし、名も無い私たちの頼みを難無[なんな]く受け入れて『今まで誰にも話したことがなかった』、家族も『初めて聞いた』という、或いは話す機会が無かったのかも知れない過去を、記憶を手繰[たぐ]りながら語り、綴って下さった人たちの心情を率直に、この文章を通して伝えたい。そんな思いで私たちは真面目に精いっぱい努力しました。
 残念なこともありました。折角の紹介や推せんをいただきながら、病に臥[ふ]されたり高齢のため話せる状況にないなどの事情で取材を断念しなければならなかった事です。
 今回、私たちは一冊の本をつくると言う作業を通して、その困難さを知ると同時に、自分の目で見る・自分の耳で聞く・自分のことばで話す・自分の頭と心で考える、そして自分の手で綴ることの素晴らしさを知りました。今まで知り得なかった郷土の歴史にふれ、多くの人々との出会いを通して女性の偉大さや自分の住む町の良さを知り、実に沢山のことを学び、そしてまた自分自身を見直す機会にもなりました。
 今私たちは、ここに辿り着くまでの過程を反すうしながら、次は私たちが、自分の歩んできた人生や故郷[ふるさと]を子どもたちに語り継ぐ役目を背負わなければならない事を思い、その道を模索しているところです。課題も多く残りましたが、次の機会に生かせるよう努力して行きたいと思います。
 かみふらの女性史を発刊するにあたって多大のご援助を賜りました町を始め上川支庁、ご指導ご支援いただきました教育委員会、ご協力いただきました住民会長さん、郷土をさぐる会、各団体の事務局、そしてお話を聞かせて下さり寄稿して下さった方々とご家族の皆様、お力添えをいただきました多くの皆様に心よりお礼申し上げます。
平成十年(一九九八)三月
会員名(五十音順)

 倉 本 千代子
 佐々木 幸 子
 鈴 木 真 弓
 永 田 ヨシエ
 羽 賀 美代子
 細 川 美 幸
 山 内 敬 子
    上富良野町開基百年記念協賛事業

かみふらの 女性史
発行日 平成十年三月一目
編  集 かみふらの「女性史をつくる会」
発 行 者 かみふらの「女性史をつくる会」
       会長  倉本 千代子
制作納品 土井義雄デザイン事務所

写真後列左より
 細川美幸、鈴木真弓、永田ヨシエ、山内敬子
前列左より
 佐々木幸子、倉本千代子、羽賀美代子

かみふらの 女性史  平成10(1998)年3月1日発行
編集兼発行者 かみふらの「女性史をつくる会」 会長  倉本 千代子