第四章 個人編 女性の職業
婦人自衛官の誕生と展望
(上富良野駐屯地広報室 佐藤 仁厚))
「WOMEN ARMY CORPS」、頭文字をとってWAC(ワック)。現在、全国の陸上自衛隊で活躍している婦人自衛官のことである。一般婦人自衛官制度の発足は、昭和四十三年三月二十七日の第一回公募幹部の入隊に始まる。発足当時は男性だけの組織であった部隊側の受け入れや、国防という観点から、男性と同じ訓練が出来るのかなど、多くの問題点でもあった。しかし、その中でWACが着実に部隊に根をおろしていった背景には、発足当時のWAC達が、制度を定着させるためのパイオニアとして努力を積み重ねたことに他ならない。
人員も、約三十年の歴史の中で逐次増員され、平成八年には、全国で約五五〇〇名を数えるなど、人的戦力の上でも欠かせない存在となった。また、職域の拡大、将来的に自衛官募集が厳しい状況になるとの見通しと、広く優秀な人材を求める見地からWACの活用を重視、発足当初、総務・人事・会計・補給などの後方的な職域に限られていたものが、昭和五十六年十二月の婦人自衛官の指定職域の拡大決定に基き普通科、機甲科、特科を除く全職域に解放されることになり、WACの職務内容や活動範囲も男性隊員と大差がなくなってきた。
上富良野駐屯地におけるWACの配置は、平成三年を境に大きく変貌する。それ以前は、第三〇一基地通信隊や、第三四四会計隊に数名ほどだったWACが、平成二年に行われた野戦特科職種の開放により、駐屯地の基幹部隊である、第四特科群にWACが配置されるようになった。また、平成六年に、第三地対艦ミサイル連隊(野戦特科職種)が新編されWACが配置、第三〇四武器野整備中隊のWACも増員されるなど、駐屯地内でのWACの姿も珍しくなくなってきた。また、ミサイル連隊の新編に伴ない、駐屯地で初めての婦人幹部自衛官が配置され、男性隊員が、その指揮を受ける場面も見受けられるようになった。
施設面では、WACの増員にあわせて、男性隊員を対象に建設された隊舎などが逐次改築され、生活環境の充実も図られてきた。職務の面では、それぞれの部隊で、男性隊員と同様の訓練に参加するのは当然のことであるが、それに加え自衛隊や駐屯地のイメージアップや広報活動の面で、女性特有の資質が重視され、男性では出来ない部分の活動がなされるようになってきている。
現在、駐屯地のWACは四十四名(平成八年七月末)であるが、平成七年に決定された全職域の開放により、第二戦車連隊への配置も可能となり、平成八年七月には、全国で初めての機甲科職種のWAC(二名)が誕生した。上富良野駐屯地におけるWACの歴史は、まだ浅いが、道内有数の規模に発展した駐屯地には、この先もWACが増え続けることが予想される。また、退職した自衛官を対象にする予備自衛官制度が、WACにも開かれるなど「国防」に携わるWACの地位は、人員の増加とともに、益々重要になっていく。
掲載省略:写真〜男子隊員と共に演習に臨む婦人自衛官
掲載省略:写真〜恒常業務でコンピューターに携わる婦人自衛官
かみふらの 女性史 平成10(1998)年3月1日発行
編集兼発行者 かみふらの「女性史をつくる会」 会長 倉本 千代子