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第一章 開拓編 女性のくらし

第一章 開拓編 女性のくらし 序文

 見る人をして日々それぞれの感を与える十勝岳。穏やかに白煙を上げながらも日ごと表情の変化を見せ、時には牙をむき人々を恐怖に陥れる山ではあるが、この十勝岳を抜きにして百年の歴史を語ることはできない。そして十勝岳は女性にとっても心の郷里[ふるさと]なのである。
 第一章開拓編−女性のくらし−では、この十勝岳の姿に自分を重ねながら、共に地域に生き歴史を編み上げて来た女性たちの遥かなる道程[みちのり]を、聞き書きと寄稿により一三の地区ごとに沿革を付して収録した。
 地区の開拓は明治三〇年、草分(団体移住)・東中(牧場貸下げ)。三一年、富原(農場移住)。三二年、島津(農場入植)。三四年、市街地(貸付け開始)・日新(牧場経営着手)。三五年、江花(牧場貸付け)。三六年、日の出(牧場開場)・旭野(農場設立)。三七年、静修(団体大地)。三九年、江幌(団体大地)。四〇年、里仁(団体入植)。四三年、清富(牧場創立)のように進み、幾多の変遷を経て現在に至っている。
 当時多くの人たちが北海道開拓に夢を託して海を渡ったが余りの厳しさに耐えきれず逃げ帰った人もあるといい、また憧れの地に嫁いでは来たものの貧困な暮しに夢やぶれ、生まれ故郷に帰ろうにも旅費もなく、泣き泣き辛抱しなければならなかった。そんな日々の中で、朝な夕なに仰ぎみる十勝岳の噴煙のかなたに故郷を偲ぶことによって慰められ励まされ耐えることができたと言う辛く苦しかった体験も語られた。
 しかし女性たちは、すべてを乗り越えて百年という歴史の頂点に立ったのである。そして今なお地域に根ざして逞しく生きる女性たちの開拓魂は悠久である。絶えることなく白煙を上げ続ける十勝岳のように。

かみふらの 女性史  平成10(1998)年3月1日発行
編集兼発行者 かみふらの「女性史をつくる会」 会長  倉本 千代子