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は じ め に

かみふらの「女性史をつくる会」 会長  倉本 千代子

 明治三十年、私たちの母なる大地「かみふらの」に開拓の斧が入れられてから百年。先人が営々として築いて来た今日の豊かな郷土に生きることに、ひとしおの喜びと感動をおぼえます。
 改めて百年の歴史を繙[ひもと]くとき、未踏[みとう]の地に夢を託して汗した開拓期に始まり、大正期の十勝岳爆発の大惨事、その復興にかけた昭和初期、そして長期に及んだ戦中戦後の苦難の時代を、男性に伍して働き、家を守り子供を生み育て、その時々を耐えて乗り越え、なお懸命に生きた女性たちの姿が、そこにはありました。
 しかし「戦後五十年」も既に過去のものとなり、あの忌わしい戦争体験さえも平和の陰に風化されようとしている今、私たちの回りにも、こうした歴史を語り継いでくれる古老が少なくなり、まして陰の立場にあった女性の歴史を探る道は、ますます遠のいてしまうことでしょう。
 かみふらの「女性史をつくる会」では、開基百年を機に私たち女性の立場で、郷土の発展に寄与した先達の足跡を探り、今を生きる私たちの指標とし、そして後世に伝えたいものと、かみふらのの『女性史』をつくる事に思い至りました。もともと、その知識も経験もなく力も無い事に躊躇[ちゅうちょ]しましたが「この機会に!」との思いに駆[か]られ、平成七年十月、七人の同志により無謀とも言える大事業に取り組むことになりました。
 教育委員会のご支援をいただきながら平成八年三月、女性史発刊に向けてスタート、取材活動を進める中で、町の開基百年記念協賛事業として採択をいただく事になり一層の弾みがつきました。しかし不馴れな私たちには正に暗中模索、試行錯誤の連続でしたが、幾度にも渡る聞き取りにも快く応じて下さり、多忙な時間をさいてのご寄稿、また住民会長さん始め各機関、団体の方々、そして多くの皆様のお力添えと、家族ぐるみ地域ぐるみでのご協力をいただき、お陰をもちまして発刊にこぎつける事ができました。
 編集に当たっては私たちなりに考え苦心しましたが、二年という短期間の中で、女性に関する記録が少ない事もあり、私たち素人の力では充分な資料収集も難しく、事実関係の確認や史実に基づく調査などには及びませんでした。私達の出来る範囲で、聞き取りによって綴らさせて頂いたものと、お寄せいただいた文面を通して、その一生をかみふらのに託した先輩の歴史を読み取っていただくことにしました。
 何分にも初めての大事業であり不足の点も多いと思いますが『いしずえ百年』の一ページとして受け止めていただき、郷土発展の陰の功労者である先達の生き様[ざま]に思いを馳[は]せていただければ幸いです。そして、かみふらの二世紀を担う女性[ひと]たちが、町の新たな歴史に更なるページを重ねて下さる事を念じます。
 かみふらの女性史発刊にあたって多大のお力添えを賜りました皆様に心からお礼申し上げます。

平成十(一九九八)年 三月
かみふらの「女性史をつくる会」会員一同

写真後列左より
 細川美幸、鈴木真弓、永田ヨシエ、山内敬子
前列左より
 佐々木幸子、倉本千代子、羽賀美代子

かみふらの 女性史  平成10(1998)年3月1日発行
編集兼発行者 かみふらの「女性史をつくる会」 会長  倉本 千代子