褐鉄鉱鉱山
褐鉄鉱とは、水酸化鉄からなる鉱石の俗称で、黄褐色または黒褐色をした、光沢が鈍い鉄の原料鉱石のことである。上富良野町では、十勝岳の火山活動によりもたらされた鉱物資源として、火口跡と思われる地形的特徴のある地域に存在している。
「北海道地下資源調査資料第三十二号」によると、上富良野町には二つの鉄鉱鉱山が採掘権を得ていた記録が残っている。
一つは、「日鉄十勝褐鉄鉱鉱床」と呼ばれ、鉱区は昭和十五年頃、札幌市の兼松キクが試掘権を設定、昭和二十六年、日鉄鉱業株式会社に譲渡した。
昭和二十七年、日鉄鉱業が採掘権を設定したが、開発を見ないまま今日に及んでいる。場所は翁温泉のある辺りで、当時は、交通不便のため開発できなかった。
もう一つは、「狩勝鉱山褐鉄鉱鉱床」と呼ばれ鉱区は昭和二十七年、針田鉱業株式会社が鉱業権を得て開発に着手したが、昭和二十八年と二十九年の二年間で大部分を採掘して休山、現在に至っている。
ここの場所は、当時の勝岳荘と白銀荘の中間にあり、ベンガラ沢支流に沿って、採掘が行われたという。このことから、現在の吹上保養センター「白銀荘」から二百メートル離れた、冷泉が湧き出ている所までの間を指すものと思われる。
試掘は、昭和二十六年、日鉄鉱業株式会社が行った「日鉄十勝褐鉄鉱鉱床」が最初で。採掘は、昭和二十七年、針田鉱業株式会社が行った「狩勝鉱山褐鉄鉱鉱床」における稼業が最初である。
(三原康敬記)
機関誌 郷土をさぐる(第15号)
1998年3月31日印刷 1998年3月31日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 高橋寅吉