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ハスカップ

ハスカップは落葉低木で、五月初旬頃淡黄色の花をつけ、六月下旬頃から完熟する青みがかった黒色の甘酸く美味しい果実で、七月一杯摘果できる。
今では多くの人が知っていると思うが、当時、苫東開発で有名になった勇払原野に自生している小果樹で、苫小牧、千歳方面で利用加工され商品化されている。人工栽培地としては美唄地方が盛んで、最大の産地となっている。
ではルーツはどこかと尋ねれば判明しないが、多分シベリア方面であって、渡り鳥のお腹を通して湿地帯に運ばれたと言う説が信憑性が高いようだ。
さて、本町に導入された経緯は、私の知る限り昭和四十四年頃、道央造園KKによる事業のようだ。先の沼の端で引抜いて来たハスカップを、二十本程移植して数年後気候風土にマッチして見事に結実した。
私の友人が二百株程の実をヨイトマケ(観光土産菓子)で有名な、苫小牧市の三星製菓に、キロ三千数百円で販売し、これはいけると判断して増植を始めたのが、今の特産物生産組合の前身である花井園芸生産組合(昭和四十七年創立)で、昭和五十七年に特産物生産組合と改称してハスカップ増植に全力を傾注してきたものである。
当初は三十数名の会員に種苗を配布すべく、長駆自生地に向い、差木の母木を採り、別海方面からも取り寄せ、僅かばかりの実生に農協ボイラー室を借りたりして育成に故村上理事達と熱中した。
本来、野生の逞しい生命力はあるものの、栽培するとなれば技術面や病害虫、剪定、販売など、チャレンジ精神が不可欠で、採算が見合うまで数年を要する先行投資は、大きなリスクになったが、高収益の魅力で昭和六十一年頃には五十数名の会員が二千二百キロ位収穫し、現在は十数名で一万二千キロ、面積約六ヘクタール前後を耕作している。
この間、全道的に増産され、道の肝入りで協会組織ができ、当農協・内村組合長が副会長の要職にあったが、果実の知名度も低く、企業の商品開発が遅れて生産過剰となり、平成二年から数年間先駆者リスクとも言えるキロ三百円前後の低価格で生産調整のやむなきに至り、廃耕続出、漸く昨年からキロ千円台になり、残存株に生産意欲が出てきたが高い宣伝費になったようだ。
かって、特産品として上川支庁からも、また町農政課の協力で、小樽の酒造メーカーでリキュール酒を作り、農協店舗で発売したりジュースを作ったりして、試行錯誤の努力をしたものの、始めは脱兎の如く見えた行政も農協も処女の如くで生産のみが特産となり、最近一部の会員の自助努力でジャム・ジュースが加工販売されている。しかし、道からも機能性食品として林檎・ブドウ並に指定され、先住民の不老長寿の食品と言われて栄養価は別表のとおりのすぐれたもので、全国広しといえども北海道だけの特産物であり、管内では風連町に次ぐナンバー2の生産地になっている。
暗中模索の畑作物の中で、起死回生をはかりハスカップで優勝カップを取りたいと思っている。
(高橋博男記)
◎ 成 分 分 析 表
分析項目  100g中の含量
ハスカップ うめ ぶどう トマト
水分g 87.5 90.1 84.4 95.0
蛋白質g 1.1 0.7 0.5 0.7
脂質g 3.1 1.6 0.2 0.1
糖質g 3.5 6.5 14.4 3.3
総酸g 3.4 - - -
灰分g 0.5 0.5 0.3 0.5
カルシュウムmg 59.0 12.0 6.0 9.0
リンmg 48.0 14.0 13.0 18.0
鉄mg 0.2 0.6 0.2 0.3
ビタミンC mg 65.0 6.0 4.0 20.0

機関誌 郷土をさぐる(第15号)
1998年3月31日印刷 1998年3月31日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 高橋寅吉