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上富良野町における新型コロナウイルスとその影響(続)

田中 正人  昭和二三年生

  新型コロナウイルス緊急事態宣言

 令和三年になった。マスクの着用と手指の消毒は日常的なものとなった。
 国内の新型コロナウイルス(以下コロナ)の流行推移は図表の通り増え続け、疲弊した景気・経済を再興させることを目的としたGo To キャンペーンは暮れ(令和二年十二月)の二十八日に停止した。
 国は一月七日、コロナ対策で二回目となる「緊急事態宣言」を二月七日までの間、一都三県に対して出し、一月十三日に七つの府県を加え対象は十一都府県に拡大した。
 北海道は令和二年暮れの二十三日、感染患者が増え続け病床数が逼迫した事からその対策として、年末年始(令和二年十二月二十六日〜令和三年一月十五日)は外出を極力控えるよう呼び掛けた。
 北海道のまん延防止等重点措置(以下「まん延防止」という。)期間(五月九日〜五月十五日)に呼応する形で町では町民に感染症拡大防止対策を防災無線、チラシにより呼びかけた。五月十六日には、道内に緊急事態宣言が五月三十一日まで発令されたが、更に六月二十日まで延長され、その後七月十一日からまん延防止に切り替わった。道内の感染者が減らず増え続け、八月二日から再びまん延防止が講じられ、八月二十七日には九月十二日迄緊急事態宣言に切り替えられた。

掲載省略:北海道新聞〜令和三年二月五日 全道版一面 国内感染者の推移と経過


  上富良野町におけるコロナ感染者

 令和三年一月中旬、防衛省の発表を受け、町では防災無線によって、陸上自衛隊上富良野駐屯地で三名の感染者があると公表し、昨年四月に発生した十勝岳ハイヤー以来の発症例となった。九月には駐屯地でクラスターも発生している。
 六月十三日には、役場建設水道課職員が感染、水道課職員全員の検査結果、新たに職員一名の感染が確認され、六月十四日から三日間建設水道課窓口業務を閉鎖した。
 七月二十日に上富良野小学校教師の感染が判明し、翌二十一日を休校にして濃厚接触者の可能性のある全児童と教員のPCR検査を実施した結果、新たな感染のない事が確認され、二十二日から夏休みとなった。
 七月になってようやく市町村毎の感染者が新聞に掲載されるようになり、以後、感染者の把握は新聞報道に統一する事にした。年間罹患者は表の通りだが、防災放送による陸上自衛隊上富良野駐屯地の感染者については七月以降掌握していない。なお、症状や経過の詳細は非公表となっている。
近隣市町村のコロナ感染の推移(令和3年)  北海道新聞調査
中富良野 富良野 美 瑛 上富良野 上富良野の備考
1月 3 自衛隊駐屯地
2月 0
3月 0
4月 0
5月 1
6月 2 建設水道課
7月 0 3 0 2 上小教職員、市町村別新聞掲載開始
8月 1 26 7 9
9月 0 7 2 8
10月 0 0 0 1
11月 0 0 0 0
12月 0 0 0 0
合計 1 36 9 26
掲載省略:リーフレット〜上富良野町新型コロナウイルス対策

  コロナワクチンの接種

 国は全国民のコロナワクチンの接種に向け準備中であった。
 上富良野でも町民に対する情報提供としてファイザー製のワクチンを四月以降順次対応して行く事を議会、住民会長懇談会等で説明。防災無線、広報を通じて町民に周知した。
 町(保健福祉課)では高齢者施設入所者及び要介護認定者(サービス利用者)の接種を五月十日〜五月二十日に実施することについて、四月二十八日から個別案内を始めた。
 五月二十四日からは令和三年度中に六十五歳以上に達する高齢者の接種を六月十一日〜七月二十一日に実施。五月二十四日からこれも個別案内した。
 ワクチン接種実施場所は、集団接種は保健福祉総合センター「かみん」において、個別接種については渋江医院と小野沢整形外科で行われた。
 郵送手続きや紛失を避けるため、コロナワクチン接種券を町が保管、二回目は三週間後と接種時に案内する方法がとられ、事務の煩雑さを避けたが混乱はなかった。
 六十四歳から十二歳の対象者については、Web・LINE・電話の申込制とし、七月三十一日〜九月四日で二回に分けて実施した。
 十二歳に到達する未接種者についても十一月十七日から十二月二十九日の間で実施された。
 ワクチンの接種を終えた者には、予防接種済み証が発行された。
 なお、三回目の接種は十二月一日から医療従事者を対象に全国で始まった。
上富良野公式ホームページより
接種状況(令和3年12月30日時点)
対象 対象者数 1回目接種済率(%) 2回目接種済率(%)
65歳以上 3,423人 96.82 96.61
64〜12歳 6,053人 91.00 90.83
全体 9,476人 93.10 92.92
掲載省略:北海道新聞〜令和三年五月二十一日 富良野版 高齢者接種予定通

  招魂祭

 戦後七十六年が経過した。
 令和三年七月一日。毎年行われている戦没者追悼式は上富良野町社会福祉協議会の主催として実施された。
 今年度は、保健福祉総合センター「かみん」が新型コロナウイルス感染症ワクチン接種会場として使用され、公民館も換気が悪く密状態となる恐れもあったことから、屋内での開催は見送られ、久しく実施していなかった神社境内の一角にある忠魂碑前での追悼式となった。
 式は十一時から行なわれ、田中利幸社会福祉協議会会長、斉藤繁町長、村上和子町議会議長 佐藤輝雄遺族会会長の各氏がそれぞれの立場で哀悼と不戦を誓う言葉を述べ、参加者全員による献花をもって滞りなく終了した。
 忠魂碑設立に尽力していた故宇佐見利治氏が、生前「忠魂碑前での追悼式の実施を」と訴えていたのだが、新型コロナウイルスの影響から思わぬ形で実現した。
 その外、例年行われている奉賛行事はすべて中止された。
 緊急事態宣言下の施設利用は、昨年と同様な利用制限が施された。(説明略 道新記事)

掲載省略:北海道新聞〜令和三年八月二十八日 道北版 公共施設利用中止


  ラベンダーフェスタかみふらの二〇二一

 表題のラベンダーフェスタかみふらのは七月十日(土)〜十八日(日)の間、日の出公園で、昨年に始まった夜のラベンダーをライトアップ。十七日には、上富良野PR大使を務める牧野由依さんのライブのほか、花火大会が動画配信サイト「ユーチューブ」で配信された。
 紫色に染まった幻想的な情景は、新たな観光を呼び起こす刺激的なもので、噂を聞きつけた観光客も夜にかかわらず多数押し寄せた。日の出駐車場用地も取得整備しつつあり、今後はプロジェクションマッピング等も取り入れ、工夫次第では、コロナ終息後の集客に大いに期待が持てる。
 なお、長年町民が親しんできた町内を練り歩く行灯パレードは高齢化が進み、熱心な率先者の高齢化と同時に、運営に出動する若者や行灯製作の担い手の減少により今年度以降の開催を中止する事が決定され、郷土芸能記念館に保管されていた行灯は解体された。花と炎の四季彩まつりの名称も今後使用する事はなくなった。

  第三十五回北の大文字

 郷土をさぐる誌前号記事の文末にも、コロナの鎮静終息を願う「北の大文字」の記事で終えたが、この願いもかなわず、新株のオミクロン株の感染拡大の中で、新年を迎えることになった。
 第三十五回を迎える恒例の行事だが、昨年同様無観客の日の出公園で行われ、「火文字」と「打ち上げ花火」の様子が、コロナウイルス禍の一日も早い収束を願いながら、オンラインで配信された。
 迎えた令和四年も、新型コロナウイルス対策が続き、来年号にも引き続き、この記事の続編を書くことになるようだ。

掲載省略:北海道新聞〜令和四年一月五日 道北版 病魔退散願い大文字


 《参 考》
 新型コロナウイルスで使われた用語(二)


【まん延防止等(マンボウ)重点措置】
 緊急事態宣言が出された際と同様に、知事が事業者に対し、営業時間の短縮などを「要請」し、応じない場合には「命令」することができ、いずれの場合も事業者名を公表することができる。さらに「要請」や「命令」を行うため、必要な範囲で立ち入り検査などを行うこともできる。ただ、緊急事態宣言のもとで可能となっている休業要請は「まん延防止等重点措置」のもとでは行えない。正当な理由がなく「命令」に応じない事業者や、立ち入り検査を拒否した事業者への罰則は、▼まん延防止等重点措置のもとでは二十万円以下の過料、▼緊急事態宣言のもとでは三十万円以下の過料となる。
 感染拡大期の適用は「上りマンボウ」緊急事態宣言解除後のリバウンドを警戒する同措置が「下りマンボウ」と使い分けた。
 三月十九日コロナウイルス感染症対策分科会尾身会長が略して使った「マンボウ」が日常化した。

【フェースシールド】
 マスクのような布で口元だけを覆うよりも、プラスチックなどのしっかりした素材で顔全体を覆った方が飛沫を防げそうだと考え着用されている。
 飛沫は直線方向に飛ぶだけではないため、自分が出す飛沫を周りに飛ばさない効果、周りの飛沫を受けない効果についての調査があるが、着用による飛沫抑制効果はわずか二十%・予防効果はほぼゼロと言われている。

【パンデミック】
 感染症の世界的な大流行を表す言葉。
 新型コロナは最長で二年間はパンデミックが続くという意見があったが、流行は三年目に入っている。

【自宅療養】
 八月、コロナ陽性患者のうち入院対象者を重症者や重症化リスクのある人に限定し、それ以外の陽性者については基本的に「自宅療養」とする方針を政府が打ち出した。

【人流】
 コロナ禍で頻繁に使われるようになった言葉。「人の流れが減少」など人出の意味合いで使われた。「人流=主要繁華街での滞留人口」として、「ある場所・時間帯における人出の様子や規模」をひと言で表せる語として重宝された。スマホの位置情報機能により把握された。

【副反応】
 ワクチンを接種すると、免疫ができる以外の反応が起こることがあり副反応とよばれる。新型コロナワクチンでは、接種部の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱、等々の症状が出ることもある。

【新型コロナウイルス変異株】
 新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスは、ヒトの体内に侵入し自分の遺伝情報のコピーを作って増殖する。これを繰り返すうちにコピーミスが起こり一部の遺伝情報が変わり、性質の一部が変化したものを変異株とよぶ。
 変異株にはギリシャ文字「α(アルファ)・β(ベータ)・γ(ガンマ)・Δ(デルタ)・o(オミクロン)…」と順に名称がつけられている。
 令和二年十月にインドで初めて記録されたものがデルタ株と名付けられ、日本には遅れて令和三年七月に感染力が強いこのデルタ株の流行で感染者が増大、第五波の感染爆発をおこした。
 オミクロン株は。令和三年十一月十一日にボツワナで採取された検体から初めて検出され、その後南アフリカ共和国からも見つかった。オミクロン株が国内で初めて確認されたのは十一月三十日。ゲノム解析でオミクロン株と判明した。北海道への感染は令和四年一月(新聞記事)で、要警戒となっている。

掲載省略:北海道新聞〜令和四年一月五日 全道版一面 オミクロン株初確認

【黙食/マスク会食】
 感染防止対策から、黙食、黙浴、黙乗などの黙〇が話題に。文字どおり黙って食べること。なお、会食する際には、食べるとき以外マスクを着用するマナー「マスク会食」も、黙食と同様によびかけを行う飲食店が増加している。
【路上飲み】
 この一年、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などにより飲食店に対して営業自粛や時短営業の要請が続いた。店がやっていないので路上に集まり飲酒する行為が増加。


 《参考資料》

◎上富良野公式ホームページ
 ・コロナ感染症防止チラシ
 ・ワクチン接種状況
 ・防災放送

◎北海道新聞
 ・令和三年二月五日 全道版一面 国内感染者の推移
 ・令和三年五月二十一日 富良野版 高齢者接種予定通
 ・令和三年八月二十八日 道北版 公共施設利用中止
 ・令和四年一月五日 道北版 病魔退散願い大文字
 ・令和四年一月五日 全道版一面 オミクロン株初確認

◎二〇二一ユーキャン新語・流行語大賞ノミネート語

機関誌      郷土をさぐる(第39号)
2022年3月31日印刷      2022年4月1日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 中村有秀