第7章　現代の上富良野　第8節　学校統合と現代の教育

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1、学校統合の経過

 

　学校統合の背景

　学校統合の目的は、小規模校を統合して学校の規模を適正化し、授業内容の充実、学校経営の合理化、教育行政の効率化を図ることである。特に中学校の場合、各教科それぞれの専門教員が必要であるにもかかわらず、小規模校では全科目の専門教員を確保できないこと、生徒会活動や部活動も低調にならざるを得ないこと、学習指導要領改定により特別教室の設置が必要でありながら、自治体の財政上、設置が進まないことなどから、小規模校の統合が必要となる。

　しかし長い歴史をもつ学校を廃止することは、通学区域の住民感情として納得しにくく、地域活動の中心となる場を失う点からいっても、マイナスになりかねない大問題である。また児童や生徒にとっては、近くの学校が廃校されることにより遠距離通学を強いられることになり、その場合の安全性や利便性、また遠距離通学に見合うだけの内容の濃い授業が受けられるのかどうかが問題となってくる。

　一方自治体の立場からいうと、北海道では「町村合併促進法」施行以来、適正規模の学校経営のために積極的に統合を推進し、町村に対して統合に関わる校舎整備への補助を行っており、補助を逃さずに統合の時期の選択することが重要となる。

　上富良野では昭和30年代後半、今後の児童数・生徒数の推移と各校校舎の改築の必要性、中学校の特別教室の設置状況から考えて、昭和39年から40、41年あたりが統合問題解決のピークと予想されており(『昭和38年議事録』役場蔵、『昭和三十七年度以降町内学校統合関係』教育委員会蔵)、昭和38年11月には、学校統合の事例研究のため新潟、富山、石川の各県への視察も行われた。

 

　表7−67　昭和42〜平成9年までの各学校の生徒数・学級数・教員数

　　上富良野小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42			1,192	28	35
43	469	482	951	26	33
44	484	489	973	28	34
45	496	483	979	26	32
46	485	508	993	27	33
47	513	490	1,003	27	33
48	511	484	995	25	31
49	494	486	980	25	31
50	511	462	973	26	32
51	503	471	974	25	32
52	504	460	964	25	32
53	493	452	945	25	32
54	492	456	948	25	32
55	482	468	950	25	32
56	449	458	907	25	32
57	463	458	921	25	32
58	450	444	894	24	31
59	426	447	873	24	31
60	406	426	832	22	28
61	408	367	775	22	28
62	404	352	756	21	28
63	385	332	717	22	29
平成1	357	329	686	21	27
2	342	308	650	21	29
3	327	320	366	21	28
4	298	320	618	21	28
5	293	331	624	21	28
6	293	334	627	21	28
7	289	285	574	21	29
8	274	273	547	21	30
9	270	244	514	19	27

　　　〔出典〕『上富良野小学校沿革誌』※学級数には特殊学級を含む

 

　　東中小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	127	103	230	7	9
43	123	91	214	6	9
44	108	73	181	6	8
45	85	75	161	6	8
46	82	75	157	6	8
47	73	67	140	6	8
48	67	73	140	6	9
49	65	72	137	6	10
50	58	79	137	6	10
51	53	75	128	6	10
52	52	73	125	6	10
53	55	72	127	6	10
54	58	70	128	6	10
55	64	68	132	6	10
56	66	64	120	6	10
57	68	55	124	6	10
58	59	52	111	6	10
59	57	53	110	6	10
60	52	48	100	6	10
61	42	51	93	6	10
62	37	43	80	6	10
63	38	41	79	6	10
平成1	39	42	81	6	10
2	32	40	72	6	10
3	33	39	72	6	10
4	36	31	67	6	10
5	39	31	70	6	10
6	33	32	65	6	9
7	31	27	58	6	10
8	32	26	58	5	8
9	29	23	52	5	8

　　　〔出典〕『東中小学校沿革誌』

 

　　上富良野西小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	187	195	382	11	15
43	195	222	417	12	15
44	208	225	433	12	16
45	207	223	430	12	16
46	218	217	435	12	16
47	207	204	411	12	16
48	217	201	418	12	16
49	211	175	386	12	16
50	197	176	373	12	16
51	199	185	384	12	16
52	209	172	381	12	16
53	227	170	397	12	16
54	229	187	416	12	16
55	228	188	416	13	16
56	204	173	377	12	16
57	195	167	362	12	16
58	202	175	377	12	16
59	200	172	372	12	16
60	219	168	387	12	16
61	214	174	388	12	16
62	205	173	378	12	16
63	190	168	358	12	16
平成1	186	162	348	12	16
2	182	161	343	12	16
3	151	153	304	11	15
4	150	136	286	11	15
5	149	133	282	11	15
6	148	122	270	10	14
7	141	119	260	9	14
8	129	112	241	7	11
9	126	106	232	7	11

　　　〔出典〕『上富良野西小学校沿革誌』

 

　表7−68　昭和42〜平成9までの各学校の生徒数・学級数・職員数

　　江幌小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	40	31	71	4	5
43	34	38	72	4	6
44	25	30	55	3	6
45	23	32	55	3	5
46	24	24	48	3	5
47	18	24	42	3	5
48	19	20	39	3	4
49	17	21	38	3	4
50	19	19	38	3	4
51	16	16	32	3	4
52	17	18	35	3	4
53	16	15	31	3	5
54	15	16	31	3	6
55	18	16	34	4	7
56	19	20	39	4	7
57	17	18	35	4	7
58	15	16	31	3	6
59	16	17	33	3	6
60	14	15	29	3	6
61	11	12	23	3	5
62	6	8	14	3	4
63	5	5	10	3	4
平成1	6	6	12	3	4
2	6	4	10	3	4
3	5	5	10	3	4
4	4	4	8	3	4
5	5	3	8	3	4
6	6	6	12	3	4
7	7	6	13	3	4
8	7	8	15	3	5
9	7	6	13	3	5

　　　〔出典〕『江幌小学校沿革誌』『北海道学校一覧』

 

　　清富小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	17	15	32	2	3
43	17	13	30	2	3
44	16	11	27	2	3
45	15	8	23	2	3
46	10	8	18	2	3
47	9	8	17	2	3
48	8	6	14	2	3
49	10	7	17	2	3
50	8	8	16	2	3
51	11	8	19	2	3
52	10	6	16	3	4
53	9	4	13	3	4
54	9	3	12	3	4
55	7	3	10	3	4
56	7	4	11	3	4
57	6	5	11	3	4
58	6	5	11	3	4
59	4	3	7	3	4
60	3	3	6	2	3
61	5	4	9	3	4
62	4	4	9	3	4
63	5	3	8	3	4
平成1	5	3	8	3	4
2	7	3	10	3	4
3	10	2	12	3	4
4	6	2	8	3	4
5	6	2	8	3	4
6	5	3	8	3	4
7	6	4	10	3	4
8	4	4	8	2	4
9	4	4	8	2	4

　　　〔出典〕『清音小学校沿革誌』

 

　　里仁小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	12	19	31	2	3
43	14	13	27	2	3
44	12	10	22	2	3
45	14	10	24	2	3
46	11	10	21	2	5
47	8	6	14	2	5

　　　〔出典〕『里仁小学校沿革誌』

 

　　日新小学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	16	11	27	2	3
43	9	12	21	2	3
44	7	16	23	2	3
45	5	16	21	2	3
46	2	9	11	2	3
47	1	12	13	2	3
48	1	12	13	2	3
49	2	14	16	2	3
50	1	10	11	2	3
51	2	9	11	2	3
52	2	10	12	2	3
53	2	7	9	2	3

　　　〔出典〕『日新小学校沿革誌』

 

　　上富良野中学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	387	399	786	20	31
43	359	365	724	19	30
44	349	338	687	18	31
45	336	336	672	18	28
46	308	339	647	18	27
47	291	322	613	17	27
48	298	337	635	18	27
49	324	342	666	19	30
50	342	344	686	20	31
51	332	329	661	18	27
52	316	315	631	18	27
53	300	299	599	17	26
54	303	291	594	17	26
55	320	280	600	17	26
56	329	292	621	18	27
57	336	311	647	17	26
58	334	305	639	17	26
59	339	293	632	17	26
60	321	284	605	17	26
61	316	306	622	17	26
62	305	312	617	17	27
63	317	310	627	17	27
平成1	307	208	587	17	27
2	296	264	560	17	27
3	287	235	522	17	28
4	286	233	519	17	27
5	276	212	488	18	29
6	248	209	457	15	28
7	214	215	429	13	25
8	215	220	435	12	28
9	186	231	417	14	26

　　　〔出典〕『上富良野中学校沿革誌』

　　　※学級数には特殊学級が1クラス含まれる

 

　　東中中学校

年	男	女	計	学級	教員
昭和42	86	76	162	5	11
43	56	67	132	4	8
44	68	56	124	3	8
45	67	46	113	3	8
46	66	37	103	3	7
47	55	34	89	3	7
48	42	34	76	3	7
49	41	32	73	3	7
50	42	30	72	3	8
51	38	38	74	3	8
52	39	35	74	3	9
53	30	33	63	3	9
54	29	32	61	3	9
55	25	31	56	3	10
56	24	39	63	3	9
57	22	42	64	3	9
58	27	40	67	3	9
59	29	32	61	3	9
60	36	29	65	3	9
61	36	27	63	3	9
62	36	31	67	3	9
63	32	26	58	3	9
平成1	20	25	45	3	9
2	19	23	42	3	9
3	20	22	42	3	10
4	24	25	49	3	10
5	20	19	39	3	10
6	19	18	37	3	10
7	16	17	33	3	11
8	15	17	32	3	10
9	15	18	33	3	10

　　　〔出典〕『東中中学校・学校基本台帳』

 

　表7−69　上富良野高校の生徒数・学級数・職員数

年	課程学科	男	女	計	学級	教員	備考
昭和41	定普昼 定普夜	8 108	12 19	20 127	1 4	9	普通科1学級の枠を分割
42	定農 定普昼 定普夜	26 8 74	11 14 18	37 22 92	1 1 3	10	定通併修普通科1年
43	定農 定普昼 定普夜	53 6 46	27 13 13	80 19 59	2 1 2	11	定通併修1、2年
44	定農 定普昼 定普夜	73 6 18	50 13 5	123 192 3	3 1 1	12	定通併修1、2、3年
45	定農 定生	103	48 39	151 39	4 1	14	定通併修2、3、4年 通信制普通科1年
46	定農 定生	96	38 63	134 63	4 2	16	定通併修3、4年 通信制1、2年
47	定農 定生	84	19 89	103 89	4 3	18	定通併修4年 通信制1、2、3年
48	定農 定生	83	117	83 117	4 4	18	以下通信制1〜4年
49	全普	32	61	93	2	7
	定農 定生	55	79	55 79	3 3	14
50	全普	69	116	185	4	14
	定農 定生	36	56	36 56	2 2	10
51	全普	109	162	271	6	16
	定農 定生	15	28	15 28	1 1	6
52	全普	112	156	268	6	17	養護教諭含む
53	全普	122	183	305	7	19	〃
54	全普	122	223	345	8	21	〃
55	全普	126	250	376	9	24	〃
56	全普	119	233	352	9	25	〃
57	全普	131	217	348	9	26	養護教諭・実習助手を含む
58	全普	134	204	338	9	26	〃
59	全普	138	207	345	9	26	〃
60	全普	123	227	350	9	26	〃
61	全普	130	215	345	9	26	〃
62	全普	155	219	374	9	26	〃
63	全普	167	208	375	9	26	〃
平成1	全普	163	228	391	9	26	〃
2	全普	155	219	374	9	26	〃
3	全普	152	205	357	9	27	〃
4	全普	154	157	311	9	27	〃
5	全普	134	150	284	9	27	〃
6	全普	126	127	253	8	27	〃
7	全普	106	110	216	7	23	〃
8	全普	90	78	168	6	20	〃
9	全普	64	75	139	6	20	〃

　　　〔出典〕『上富良野高校沿革誌』(5月1日調べ)

 

　旭野小学校の廃校

　上富良野で最初に統合された学校は、旭野小学校であった。旭野小学校は昭和26年以降複々式校となり、教員数3名、児童数60〜80名程度の小規模校となっていた。また校舎の改築を迫られたことから(『町報かみふらの』第41号、昭37・2)、昭和36年ごろより町教育委員会と住民との間で統合問題について協議がなされた。昭和37年2月6日には地区の総会で統合を決定し、「旭野小学校の統合についての要望」を教育委員会に提出した。それによると旭野地区からの要望は、�@循環バスの運行と道路の拡張により通学バスを確保すること、�A停留所を多く設置すること、�B通学費用を町が負担すること、�C通学指導のため教員1人を現住所より通勤させること、�D婦人学級、青年学級を従来通り実施すること、�E校舎を公民館の分館として改築し管理人を置くこと、�F山加にある学校林を公民館林とすること、�G公民館分館として必要な備品を残すこと、�H屋外グランドを青壮年に使用させることの9点であった。

　これに対して町教育委員会は、�@については循環バスを道路整備完了後運行する、�Aは了承、�B小学生は可能な限り負担し、上富良野中学校通学生に関しては年度ごとに両者で協議し決定する、�C・�Dは承認、�Eは近い将来に実現、�Fは分収林と同様の扱いとする、�Gは要望に答える、�Hは要望通り実施となった(『昭和37年度議事録』役場蔵)。特に�@のスクールバスの運行については、登校日のみ1日3往復し、年額補助金は200万円とされ、児童以外の利用者は料金を払うこととなった(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。

　2月19日の第3回臨時教育委員会会議では、旭野小学校を上富良野小学校に統合することが決定された。3月17日の定例議会で廃校が議決され、同校は37年4月1日上富良野小学校に統合された。この統合は、この後の上富良野の学校統合において、地元が何を町に要求すべきか、町が地元の要望にどのように対応すべきかについての、1つのモデルを提供することとなった。

 

　江幌中学校の統合

　江幌・静修地区では、昭和37年6月に中学校統合問題に関する初めての懇談会が開かれ、統合に父兄が比較的積極的だったこともあってか、同年8月には統合に関する要望書が地区住民から出された。それによると、�@昭和38年度4月1日から統合し、できない場合は早急に現中学校の設備を完備すること、�A統合による通学費は町が負担すること、�B町市街西地区に新校舎を建築すること、�C古い校舎を地区公民館として残すこと、�D現教員を通学生監督上、現住所から通勤させること、�E下校時のバスを適正時間に運行すること、�F昭和40年度ころまでに新校舎付近に教員住宅を完備することなどが求められていた(「中学校統合に対する江幌静修地区意見書」『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。しかしこの時期には、東中中学校についても統合問題が持ち上がっており、周辺校である東中中、江幌中、日新中とどの中学校をどう統合していくかについて、はっきりした方針が確定していなかった。結局江幌中学校を上富良野中学校に統合する方針が確定したのは、37年12月22日の町議会教育民生常任委員・教育委員合同会議の席上で、上富良野中学校の特別教室の完成をまって統合する(『昭和38年度教育委員会々議録』教育委員会蔵)こととなった。

　その後上富良野中学校の特別教室は、昭和38年9月21日に完成し、同年10月26日には江幌・静修地区に中学校統合問題解決委員会が結成された。11月15日には江幌中学校統合問題懇談会が開催され、地区住民の要望事項が改めて明らかにされた。その内容は、�@交通費の全額町負担、�Aバスダイヤの整備や退避所、待合所の設置、13線橋の処置、終点(15線)までのバス運行、冬期の除雪などを含めた道路の整備、�B統合の時期を昭和39年4月1日とする、�C小学校校舎体育館の整備、�D有線放送施設の完備、�E教員住宅の修繕と通学生への指導となっていた。

　翌39年1月6日の懇談会ではこれに対する町の回答が示され、�@は実施、�Aは道路整備計画により推進、あるいは実施の努力を確約、�Bは受容、�Cは年度計画による改築を約束、�Dは善処する、�Eは却下するとの回答を示した(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。またこの条件で地区の統合の意志は固まり、27日の第9回教育委員会会議で統合が決定された。統合記念式は3月25日江幌小学校体育館で挙行され、江幌中学校は4月1日をもって上富良野中学校に統合された。

　一方、中学校統合問題と平行して江幌・静修地区の住民は、要望書にもあった小学校の体育館改築の昭和39年度実施と校舎の年度別改築に関する請願書を1月24日付で教育委員会に提出し、28日町議会で採択された。しかし結局、昭和39年度には体育館は改築されず、校舎と体育館の改築順も要望とは逆になり、昭和40年に新校舎第1期工事で普通教室5、職員室、校長室、便所、給水室が完成し、翌41年には体育館と音楽室など特別教室が新築され、9月27日に落成祝賀会が行われた。

 

　日新中学校の統合

　日新中学校は、昭和41年4月1日上富良野中学校に統合された。

　日新・清富地区では、昭和38年11月28日に懇談会が開催され、日新中学校の統合問題が浮上し、その後地区の総会で同校の統合に関する意見統一をみ、翌39年2月14日付で要望書を町教育委員会に提出した。それによると、�@道路の幅員拡張、�A待避所の設置、�B待合所の設置、�Cバス路線の延長、循環、�D冬期間の除雪、�E交通費の無期限無料、�Fスクールバスの年間運行と下校時の2本運行、�G中学校統合による小学校負担の軽減、�H通信網の完備、�I吹雪の場合の生徒の帰宅対策、�J制服の制定、�K統合に至るまでの数年間の教育の機会均等の実現、すなわち現中学校の新教育課程に即した施設の整備が要望されていた(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。また日新・清富地区の住民は、これらの条件通りでないと統合には応じないとし、同地区の環境整備のための統合という印象すら持たれた(「昭和39年3月4日第10回教育委員会」『昭和38年度教育委員会々議録』)。

　昭和39年には4回にわたり教育委員会と地域住民との話し合いが行われたが、ちょうど江幌中学校や創成小学校の統合が進められている時期と重なったため、日新中学校の統合はこれらの統合が終わった後、前例に従って条件を決定することとなった。

　また地区の要望に対して教育委員会は、�@は考慮する、�Aは年次計画にそって整備する、�Bは統合後に予算化する、�Cは現段階では無理、�Dはバス路線は優先する、�Eは旭野、江幌の前例に従い、全額町負担とするが期限に関しては要望の実現に努力する、�Fはバス会社への働きかけを約束する、�Gは考慮する、�Hは実施は無理、�Iは寄宿舎の設置など考慮する、�Jは標準服の着用を指導する、�Jは考慮するという回答をし、これが地区にほぼ受け入れられたことから昭和41年1月14日教育委員会で統合が可決された。

　一方日新中学校の統合決定により、同年3月3日付で「日新小学校校舎及び施設の整備に関する要望書」が地区から町議会に対して出され、�@現中学校教室を小学校教室として使用する場合完全改装すること、�A職員室と公民館を新築すること、�B職員住宅を2戸新築すること、�C体育館、水道、その他施設を再整備することが要望された。この結果、中学校の普通教室を小学校の教室として使用する一方、もとの小学校校舎を音楽室、教具室として利用した。また「上富良野町文教施設整備五カ年計画」にも日新小学校の校舎改築が盛り込まれ、昭和42年7月上旬から職員室、理科室が新築され、10月7日落成式が挙行された。その後44年には職員住宅も新築された。

 

　創成小学校の統合問題

　昭和39年3月25日の創成小学校ＰＴＡ総会の席上、久保茂儀教育長は同校と上富良野小学校の一部を統合して、適当な場所に新校舎を建てたいという方針を明かした。創成小学校のある草分地区は農業地帯で、昭和40年代には児童数の減少が予想され、10年後には複式となるとみられていた。一方上富良野小学校は自衛隊誘致以降児童数が増加し、当初の校舎改築計画が破綻したうえ、町財政の逼迫もあって第3線校舎の改築に着手できない状態であった。そこで上富良野小学校の一部と創成小学校を統合して新たに1校を開校し、創成小学校の児童減による学習環境の低下と上富良野小学校のマンモス化を一気に解決しようというのが町教育委員会の方針だったのである。

　ところが草分では、昭和39年5月11日の創成小学校ＰＴＡ役員会において、現在地に校舎を新築する運動を起こすことが決定され、16日には「創成小学校建築期成会」を結成した。地区住民の希望は、校舎位置を移転するのではなく現在地に新築するというもので、6月20日にはそのための請願を行った。この請願は昭和39年7月2日に町議会に上程され、6日採択された(『昭和38〜39年度請願陳情』役場蔵)。しかし8月24日の議会教育民生常任委員・教育委員合同協議会において、創成小学校に関しては、昭和42年度をめどに上富良野小学校の一部と日新小学校を合わせて27号付近に統合新設校を建設する話がまとまり(『昭和39年度教育委員会々議録綴』教育委員会蔵)、昭和39年11月28日にはこの提案に対する地区の懇談会が開催された。この懇談会には地区の住民23名も出席したが、住民側からは統合により校舎位置が変わる点が懸念され、積極的に統合に賛成する声はなかった(『昭和37年以降町内学校統合関係』)。

 

　統合の決定

　その後草分地区では、統合に関する懇談会が開かれる一方、住民自ら富良野扇山小学校の視察に出かけ、統合に関する調査を行った(『昭和39年度教育委員会々議録綴』)。

　昭和40年5月24日付の「創成小学校統合新築促進についての請願書」によると、草分地区からの統合についての条件は、�@校舎は昭和42年度中に体育館を含めて新築を完了すること、�A学校、地区の沿革を引き継ぐこと、�B校下部落の各種団体が使用できる研修所を設置すること、�C道路網の完備と通学のためにバスの既存停留所の調査と待合所の設置、�D通学児童の優先乗車と乗車賃の全額助成、�E校舎の跡地を文教関係に活用し、広場として存続すること、�Fその他統合新築によって起こる必要な事項、の7点であった(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。

　この請願は昭和40年8月23日、30日と町議会教育民生委員会に付託されたが、統合の絶対条件となる校舎新築と「道立高校の誘致運動とその実現の早期見通し」や「開基70周年記念事業としての庁舎建設」など、町が抱えている他の計画との財政的な兼ね合いをきちんと精査したうえで、請願の取り扱いを決定すべきであるという考え方から、この請願は継続審議されることとなり、10月15日やっと採択された(『昭和40〜42年度請願陳情』役場蔵)。また町としては�C、�Dはほぼ受け入れ、�@については補助金の交付額が有利であることから、全部を1期のうちに建設せず、42年度全教室、43年度管理棟と特別教室、44年度体育館の3年間継続事業で取り組む、�Aについて校名は上富良野西小学校とする、�Bについては旧校舎を活用して公民館的建物を整備する、�Eについては文教施設として活用する、�Fについては水洗トイレや暖房などについての希望に善処するとした(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。

　一方統合の条件の話し合いと平行して、新設小学校の通学区を決める作業も行われていたが、最小限12学級を維持し、18学級程度の学校規模とすることや、道路の位置どりや橋の整備により変更される可能性などが考慮され、草分、日の出、島津、市街地の児童のほか、江花小学校や日新小学校にも統合の可能性があった(『昭和40年度教育委員会々議録』教育委員会蔵)。

 

　江花小学校の統合問題

　一方昭和42年度には複々式となることが予想される江花小学校では、昭和40年12月17日に開催されたＰＴＡ理事会の席上、久保茂儀教育長が同校の統合を打診したことから、統合問題がもちあがった。

　江花地区では、昭和41年4月14日、「江花小学校学校問題研究協議会」を結成してこの間題の検討を開始し、5月1日には住民の意見と統合の条件を集約した。これによると江花のなかで、統合賛成と反対が半々に分かれる地区、統合したほうがよいという意見のほうが多い地区、条件さえ整えば統合に賛成の地区があり、また統合の条件としては、�@全学年を統合する、�A公民館の新設、�B通学バスの無料化、�C季節保育所の設置、�D通学用バス待合室の新設、�E特に冬期のバス運行の正確さの確保、�F中学生、一般住民の通学バス無料乗車、�G道路の整備、�H幼稚園の設置、�I学校林の地区所有、�J体育館の存続、�K公衆電話の存続、�L通学バス路線の検討などが要望されていた。これに対し6月15日の地区の総会で提示された教育長の回答は、�B、�D、�E、�Gは受け入れ、�Fは一般住民には認められず、�C、�Lは善処するというもので、しかも�@については1、2年生を分校に残す案が提案された。そのため�@、�I、�J、�Kは取り下げられ、また同日「江花小学校統合実行委員会」が発足し、統合の実現にむけて残された問題点を検討する作業が始まった(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。

　その後11月15日には残された問題点に対する教育長との交渉がなされ、�@学校林の所有、�A水道整備、�B保育所設置、�C一般住民のスクールバスの乗車、�D校舎改造、�Eバス路線の整理の6点が要望された。その結果、�C以外は基本的に推進または善処する方向での回答が得られ、さらに42年2月2日の教育長の回答では、江花小学校は、統合後上富良野西小学校の分校となるのではなく、1、2年生が在学する分室となる、学校林は地区側の要望通りとする、一般住民のスクールバス乗車と保育所設置は改めて地区から町長や民生課に陳情する、分室勤務の教員の手当は町教育委員会が支給することととされていた。2月21日の教育長との話し合いでは、保育所を民生課がやらない場合は公民館でやることなどが話し合われ、ほぼ条件が煮詰まり、江花小学校の廃校が2月27日の議会に提案された(『昭和37年度以降町内学校統合関係』)。

 

　上富良野西小学校の開校

　一方創成、江花両小学校の統合条件の検討と平行して、昭和41年9月には草分、江花、市街地の地域住民代表による「上富良野町統合新校舎建築委員会」が発足し、道内各校の施設や設備を視察し、水洗トイレや温風暖房など新校舎の構想を町に要望した。また昭和42年2月16日の第2回教育委員会会議で両校の統合にともなう廃校を決定し、27日の第2回臨時町議会で創成小学校、江花小学校廃止が可決された。この結果昭和42年4月1日上富良野西小学校が発足したが、この日までに新校舎は完成せず、結局完成するまで統合前の各学校の校舎ごとに学級編成を行った。

　校舎は7月から着工し、普通教室8、プレイルーム、図書室、校長室、職員室、宿直室、湯沸室、校具室、ボイラー室など鉄筋2階建て校舎が完成したのは、11月のことであった。同月20日には創成小学校から116名、江花小学校から48名、上富良野小学校から229名の計393名が出席して開校式が行われた。しかし児童の通学区域の内訳は、11月7日の教育委員会会議でもまだ流動的で、新栄町、三光町を含めるかどうかが問題となっていたが、結局これらの地区を含め、草分、江花全区域、日の出4東、4西、5、6、7、更生の各地区、西島津地区の1東、1西、2東、2南の各地区、市街の中央区、北栄区、西富区の三光町、新栄町となった。また遠距離通学者はスクールバスで通学を開始したが、道路網の整備が間に合わず、市街はずれから新設道路にいたるまでの国道の歩道ができていないうえ、バスも定員オーバーというお粗末なありさまであった(『昭和42年度会議録』役場蔵)。

　一方創成小学校の沿革の継承に関しては、草分地区に上富良野で最も歴史ある小学校として「創成」の名を残したい意向があり、最後まで問題となった。しかし開校後も教育委員会が草分地区の住民を説得し、校名を「上富良野西小学校」とすることは明治、大正、昭和戦前期に冠していた「上富良野」に戻ることであるとして了解を得(『昭和41年度会議録』役場蔵)、12月2日の教育委員会会議で創成小学校の沿革については、以前の趣旨を校下住民に周知することとし、翌年3月に行われる上富良野西小学校の卒業式を第1回卒業式とすることとした(『昭和41年、42年会議録』役場蔵)。

　昭和43年4月からは第2期工事として、普通教室4、音楽室、図工室、家庭科室、理科室とそれぞれの準備室、保健室、放送室が新築され、第2学期から使用された。翌44年には体育館も建設され、10月25日に校舎落成記念式が挙行された。またこれにより、上富良野西小学校校舎の総工費は1億1,000万円となり、放送、給水、消火、し尿、浄化設備のほか、重油温風暖房、テレビ共同聴視設備などが設備され、体育館にもステージや控室もある近代的設備の完備された校舎ができあがった(『広報かみふらの』第126号、昭44・12)。また上富良野西小学校の統合過程や近代的校舎の完成により、上富良野は「学校統合の先進地」、或いは「教育行政優良事例」とされ、昭和46、7年には八雲町や芽室町の視察を受けた。

 

　写真　上富良野西小学校の新築工事

　　※　掲載省略

 

　里仁小学校の統合

　里仁小学校の統合に関しては、昭和38、9年ごろから既に教育委員会でも話題となり、地区の懇談会も開かれていたが、児童の一部が美瑛第四中学校へ進学する特殊事情もあって、時期尚早とされていた(『昭和38年度教育委員会々議録』)。しかし昭和47年2月には教育委員会より統合の意向を伝えられ、11月より地区住民との話し合いが始まった。住民のなかには統合により地区が中心的施設を失い過疎化が激しくなること、大規模校が必ずしも教育効果を上げるとは限らないこと、児童の通学の問題などを理由として、統合に反対するものもあった(『広報かみふらの』第166号、昭48・2)が、同年12月27日には町教育委員会で統合に関する具体的な決定がなされ、翌48年1月19日には学校統合に関する本格的な地区の懇談会が開催された。27日には町教育委員会から「里仁小学校統合に関する町教委の方針」が示され、2月6日には里仁地区の住民からの要望書が提出された。15日には委員会と住民との間で統合の条件を記した「里仁小学校統合に関する覚書」が交換され、統合の条件は�@通学費の公費負担と町スクールバスの運行、�A道路の改良工事と退避所、待合所の設置、�B道路改良工事は昭和48年度中に沼崎地区白川地先まで実施し、31号道路は昭和48、9年に改良工事をすること、沼崎の踏切付近の改良工事の検討、警報機の設置、�C除雪の継続、�Dスクールバスの運行時刻を学校の始業時間と低学年、高学年の下校時間に合わせる、�E31号道路の町道として分筆登記、�F公民館分館の48年度中新築、�G体育館、グランドなどの施設、備品等の小学校からの引き継ぎ、�H学校敷地を利用した林間教育設備、�I公民館分館設備の充実、�J学校林は里仁地区住民会へ引きつぐ、�K西小学校の暖房完備と児童の健康管理、�L西小学校狭隘につき1学級児童数を配慮、�M過疎化、後継者、今後の地区発展に対する対策検討、�N廃校経費並びに参観日等に参加する際の父兄の経費の町側負担など詳細なものだった。これに対して町は、�@、�C、�G、�Jは受け入れ、�A、�Bは一部を変更し協議続行、�Dは善処し、スクールバスの1台増車を確約、�Eも努力を確約し、�Fは49年度建設を約束、�Hは今後の検討課題とし、�Iも公民館建設後の検討課題とした。また、�Kは対策を確約、�Lは西小の教室は児童数からいって問題ないとし、�Mの対策としては公民館活動の活発化をあげ、�Nの廃校経費の関しては江花・創成小学校と同程度の負担を約束した(『昭和44〜47年度学校統合関係綴』、教育委員会蔵)。その後2月21日には教育委員会会議で統合が正式に決定され、春分の日の3月21日閉校式が行われた。これにより昭和48年4月1日、里仁小学校は上富良野西小学校へ統合された。

 

　日新小学校の統合

　日新地区では離農と日新ダム建設により過疎化が進み、昭和46年ころから日新小学校の児童数が著しく減少した。そのため同校の統合問題が浮上し、地区としても消極的ながら昭和52年3月30日に「学校統合に伴なう要望」を町教育委員会に提出した。これによると、�@教職員の異動について善処されたい、�A学校林を地区の基本財産として残してほしい、�B宿泊施設を含めた地区の集会施設を新築してほしい、�C校舎跡地を町、地区の振興に寄与できるよう有効利用を考慮されたい、�D除雪は通学の支障とならないよう万全の措置を講ぜられたい、�E分館活動に必要な備品等の利用を考慮されたいの6点が要望されていた。また昭和52年7月2日の同校のＰＴＡ総会では、種々の条件が整えば昭和54年4月に統合にふみきることが決議された。しかし12月17日の教育委員会と地区住民との話し合いで、町側が児童の通学にスクールバスではなく定期バスを利用することを提案したため、日新側が「スクールバスの運行」を統合の第一条件とし、翌53年3月1日の話し合いでも通学問題などの条件が整わなかったことから、住民は同校の存続を決め、3月14日付で校舎並びに教員住宅の新築を請願した(『昭和53年度日新小学校廃校関係』、教育委員会蔵)。そこで町教育委員会はいったん統合間題を白紙に戻し、住民側も昭和52年3月に提出した�@から�Eの条件を再度要望書として提出し、町教育委員会との話し合いを再開した。

　その後、スクールバスの運行や集会施設として「日新寿の家」を建設することなどがまとまり、町教育委員会は昭和53年7月27日付で要望書に対する方針を提示した。それによると�@は善処する、�Aは日新行政区林とする、�Bは校舎、職員住宅を処分し、体育館は研修の場として残す、住宅跡地に集会施設を建設する、�Cは青少年健全育成や地域住民のスポーツ振興の場とする、�Dは実施を確約、�Eは配慮する、また児童1名分の通学費援助として3年間に限り30万円を支給することなどが提案され、これにより日新地区の住民は7月31日この方針をほぼ了承した。

　この結果、昭和53年12月27日付で「日新小学校統合に関する覚書」が町と日新地区との間で取り交わされ(『昭和53年度日新小学校廃校関係』)、「日新小学校統合実行委員会」が発足した。その後同会により種々の準備が進められ、翌54年3月24日には200名が参加して閉校式が開催され、4月1日日新小学校は上富良野西小学校に統合された。