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2章 先史から近世までの上富良野 第1節 北海道の先史文化

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2 日本列島への旅

 

 遠い遠い祖先

 私たちの祖先である人類がいつ生れたか、そして、どのような道のりを経て今日に至ったか。この大きな問題は、長い間にわたる研究によっても、まだ結論が出ているわけではなく、新しい発見によって、書き換えられることも多い。

 現に、昭和30年代には、人類100万年といわれていたが、その後、新しい発見によって200万年前に、そして現在では440万年前ともいわれている。

 人類は、生物学的には、最も進んだサルの仲間として類人猿(ゴリラ、チンパンジーなど)に分類されている。この類人猿の中で、人類を識別しているのは、立って、2本の足で歩くという、直立二足歩行である。

 今から400万年ほど前、アフリカ東部で直立二足歩行を始めた人類は、長い長い時間をかけて、猿人、原人、旧人、新人と4つの段階を経て進化してきた。

 今日までの研究では、人類のふるさとは、アフリカと考えられている。このことは、今、生活している私たちの遠い、遠いふるさともアフリカということになる。少し奇妙に思えるが、現在、北海道に住む多くの人たちは、何世代か前に本州から移り住み、その何千世代か前の人が大陸から来ている。その大陸の人々も何万世代か前にアフリカから移ってきた人である。このように、生命の糸は切れることなくつながっている。

 その最初の人類である猿人・アウストラロピテクス類の脳容積は、今日のゴリラとほぼ同じくらいの量しかなかった。その初期の人類は、気の遠くなるような300万年という長い歳月をかけ、ゆっくりと猿人から原人に進化している。

 その後、100万年から20万年前までは北京原人や直立原人で知られる原人の時代である。この時代にアフリカからヨーロッパ、アジアへと広がりを見せ、北京原人は火を利用したことも分かっている。原人の後、20万年前から3万年前までの間を旧人と呼び、その分布は地球全体に広がりを見せている。そして3万年前以降、新しい文化を、次々に生み出して、今日に至った人々を新人と呼んでいる。

 

 表2−1 北海道の時代区分

   出典 財団法人 北海道埋蔵文化財センター『遺跡が語る北海道の歴史』(1994)による

  ※掲載省略

 

 氷河時代

 このように長い人類の歴史は、厳しい自然条件との闘いでもあった。人類の歩みと関わる地球の歴史は、何度かの寒冷な時代を経験している。現在も、南極大陸や北極圏は、厚い氷に覆われているが、一般に、この氷が解けると海水面が上昇し、氷の量が増えると海水面が下がるといわれている。

 氷河時代と呼ばれるこの寒い時代は、現在以上に厚い氷が大陸を覆い、ヨーロッパ、北アメリカでは、大きな氷河の広がりの跡が確認されている。また、その痕跡は、日本アルプスや北海道の日高山脈でも見ることができる。何度か繰り返された氷河時代を人類は生き抜き、この最後の間氷期から氷河期にかけて、世界各地の広い範囲にわたって活動を始めることになる。

 この寒冷な時代は、水が氷となって陸上に残るために、海水面が下がり、日本列島はユーラシア大陸と陸続きであった。その陸の橋を渡って、マンモスやオオツノシカなどの大型動物と共に、人々は日本列島にやって来たと考えられている。

 このような厳しい自然環境のなかを進化、発展してきた人々がいつ時、日本列島に移り住むようになったのか、人類学、考古学の両面からの研究が続けられている。しかし、日本列島の土壌は、古い人骨が残りにくいために、その発見例は極めて少ない。それを補うために、その人々が残した痕跡・考古学資料によって、いつ頃からの生活をしていたかの調査研究が続けられている。