郷土をさぐる会トップページ     第30号目次

編集後記

編集委員長 野尻巳知雄

 「上富良野郷土をさぐる」を発刊してから今年で三十号を迎えることになりました。郷土をさぐる会が発足してから三十五周年という年月を経て、今日まで多くの人々に支えられ、励まされ、ご協力をいただきながらはぼ毎年発刊を続けることが出来たことは、関係する皆さんのお陰と感謝の気持ちでいっぱいです。

 三十号は、節目の記念号ということもあり、向山町長さんのお祝いのことばや、初代会長金子全一さん、二代目会長高橋寅吉さんの縁の方々にそれぞれの思い出について寄稿していただきました。

 毎年連載している「各地で活躍している人達」は、千葉県在住で『千葉県風土記―風土と文化』外千葉県などの歴史と文化についての多くの著書を出版し、現在四大学の兼任講師として活躍されている赤川泰司氏から「『皆さんの十勝岳は世界一です』に勇気づけられて」と題して、十勝岳で雪の結晶を研究された中谷宇吉郎博士についての記述と、幼い頃の上富良野の思い出について寄稿していただきました。

 同じく、札幌在住の吉田雅明氏(吉田貞治郎弟吉之輔氏の孫)からは、「かみふらの小母様『清野てい』さんに感謝をこめて」と題して、上富良野の開拓と発展に多大な功績を残された吉田貞治郎さんの次女、清野ていさんについて、生前の活躍の様子や人柄などについてを記述していただきました。

 また、清野ていさんと生前に親交の深かった冨田満子さんが「故『清野てい』さんを偲んで」として、晩年の清野ていさんとの交流の様子や清野ていさんについて、細やかな表現で思いでの文章をつづり寄稿していただいております。同じく関連して、中村有秀氏には、清野ていさんの遺物を整理された記録から、「故『清野達氏』の足跡を辿って」と題し、清野ていさんのご主人清野達氏についての足跡と、活躍の様子を記述していただきました。

 「しだれ柳は見ていた」を執筆した鹿俣政三氏は小生と高校の同期であり、小説「泥流地の子ら」を執筆されるなど、今後の活躍を期待される人物でありましたが、この原稿をまとめている間に帰らぬ人となってしまいました。編纂に携わった田中正人氏が掲載依頼をお願いにうかがった病院での面接が最後であったと聞いていますが、氏が残した草分け地区の貴重な歴史の数々が記されています。

 「『UFO』物語」は、大森金男氏が子供の頃実際に体験した現象について記述され、未知の未確認物件にたいする興味深い内容が記されています。

 「選挙こぼれ話」は、倉本千代子氏が青春時代に体験した選挙運動にまつわる思いでを、立候補者や運動にたづさわった人々について、当時の感想をまじえて表現豊かに書かれており、「その二」の原稿が待ち遠しいような内容となっています。

 「『十勝岳爆発災害志』を読み解く」は、『十勝岳爆発災害志』をめぐる様々なエピソードや、内容についての感想を記述されており、なかなか興味深いものがあります。

 「後藤純男画業六十年『美術館十五周年を迎えて』」は、上富良野に後藤純男画伯の美術館が開館して今年で十五周年を迎えた節目の年であり、これまでの館の歴史を残そうと美術館館長の行定俊文氏が、後藤純男画伯についてのプロフィールや、美術館開館までの経緯について述べられています。

 石碑が語る郷土の歴史その十七は、毎年連載している中村有秀氏が「札幌市内に建立されている上富良野関係碑」その一で「中谷宇吉郎博士の『人工雪誕生の地』碑」がある北大構内の石碑と、中谷宇吉郎博士と上富良野の関係について、博士の研究地十勝岳白銀荘との関わり等を記述されました。その二では、「北海道出身者の『沖縄戦戦没者慰霊碑』」について、沖縄戦に係わる氏の研究された数々のデーターを基に石碑に記載されている上富良野の関係者について記述されています。中村さんには、本号が三十号の特集号ではありますが、三本の原稿を記述されたその努力と貢献には、頭の下がる思いで敬服いたします。

 今年は例年になく雪が多く春の訪れも大幅に遅れることが予想され、農業の町としてTPPの心配も懸念されますが農作業に支障の無いように祈るばかりです。今年も良い年であることを願い編集後記とします。

機関誌      郷土をさぐる(第30号)
2013年3月31日印刷      2013年4月1日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 成田政一