郷土をさぐる会トップページ     第29号目次

編集後記

編集委員長 野尻巳知雄

  今年の冬は何と雪の多い年なのだろう! 三月の下旬になってもまだ雪は降り止まないで舞い降りてくる。
 中谷宇吉郎博士は「雪は天から送られた手紙である」といったそうであるが、毎日雪撥ねに追われ通しの北海道では、交通機関が寸断されたり、雪の重みで家屋が押しつぶされたニュースや、屋根の雪下ろしで大勢の方が亡くなられたとの報道に接すると、中谷先生のようなロマンチックな心境にはとうていならない昨今であります。
 「かみふらの 郷土をさぐる」第二十九号をお届けします。本号の表紙は昨年に引き続き佐藤 喬氏の作品から「江幌・旧小原勇治さん宅」を掲載させて頂きました。佐藤氏には毎年無料で作品の掲載を提供していただき感謝に堪えません。心からお礼申し上げます。

 各地で活躍している郷土の人達では、埼玉在住の杉本 劭氏から投稿いただき、上富良野のふるさとの思い出を書いていただきました。今後も氏のご活躍とご健勝をお祈りいたします。

 本号の特集として東日本大震災の支援事業を取り上げました。上富良野町から役場職員、消防隊員、自衛隊隊員がそれぞれの業務で支援を行っていますが、役場職員の中からは代表して辻 剛さん、山内智晴さん、角波光一さんの三名の方に寄稿していただきました。特に三人には当時の状況と感じた気持ちを書いていただきましたが、十勝岳大噴火の災害の経験を持つ町民としては、現地の被災者の気持ちが深く理解することが出来、今後の災害の備えに参考になることが多かったように思われます。
 消防隊員の派遣については、北海道隊の編成で道北ブロック救急隊・富良野広域連合消防本部派遣隊員として派遣されましたが、救急業務と捜索活動に従事した様子や現地の状況、活動の困難だったことが書かれています。
 上富良野駐屯地からは、総勢千名を超える隊員が派遣されましたが、支援部隊ごとに分かれ行方不明者の捜索、物資輸送支援、生活支援、給食支援、給水支援、遺体搬送支援、支援活動部隊への燃料・糧食・車両整備支援などのサポートなど、多くの分野にわたった支援活動が展開されました。頁数の関係でごく僅かな活動状況の紹介に終わってしまいましたが、町民の皆さんには詳細な活動状況の報告が社会教育総合センターに展示してありますので、機会がありましたらぜひ報道機関紙に目を通していただきたいと思います。派遣された役場職員の皆さん、消防隊員のみなさん、自衛隊員のみなさん本当にご苦労様でした。

 岩崎治男さんには「富良野地域で操業した木工場の歴史」を寄稿して頂きました。明治期からの木材利用の歴史と木材産業の変遷を細かな調査をもとに執筆され、歴史の流れが理解しやすく今後の参考になる寄稿です。

 田中正人さんの「菅野祥孝氏を偲ぶ」−『積年良土』永遠の提言の寄稿も、本号の特集で取り上げることとなったテーマであります。
 菅野祥孝氏はスガノ農機鰍フ社長として上富良野町に大きな貢献を残された方で、その活動や思想、行為、功績は多くの町民の心に尊敬の念と感銘を与えております。その氏が平成二十三年七月にお亡くなりになり、会社葬のお別れの会には町民はもとより、全国から参列に加わって氏のお別れを偲んだ状況や氏の人柄、功績、行動、実績などについての内容が細かく簡潔にまとめて掲載されています。
 上富良野郷土をさぐる会でも氏に講演をお願いしたり、郷土をさぐる誌に寄稿をお願いするなど、生前は非常にお世話になっていたこともあって本号で特集を組ませていただきました。ぜひ一読願いたいと存じます。最後に故人の功績を称え、お世話になったことに感謝申し上げるとともに心からご冥福をお祈りいたしたいと思います。

 私の原稿「ふらの原野の歩み」その六は、北海道文書館に残されている未開地貸付台帳・未開地売払台帳からふらの原野の貸付申請者、売払申請者とその後の譲渡者及び開墾成功者などを列記してみました。
 これらの記録は、明治四十年から昭和十五年までのふらの原野開墾に関する台帳の全記録(上富良野関係部分)を掲載しており、今回ですべての開墾記録は終了となります。長い間お付き合いいただきありがとうございました。

 大森金男さんには「富良野盆地平原−潅漑溝−」を寄稿して頂きました。氏の子供の頃の思い出を通して、富良野平原を豊かな水田地帯へと導いた潅漑溝の役割や変遷について記述されています。

 奥田 司さんには「倍本農場−開拓とアイヌ−」について投稿して頂きました。倍本農場は上富良野の開拓の歴史の中でも早くに開墾に着手されており、自作開墾農場として開拓され、入植者全員で組合を組織して助け合い、組合員が病気になったり困ったときにはお互いに助け合うために基金を設け、年一割の利息で貸付も行ったとの記録も残されています。
 今回は最初の入植者の子孫である奥田さんが、先住民のアイヌの人たちとの関りなどについても記述されております。今後もこのような投稿をぜひお願いしたいものです。

 最後に今回東中地域の多くの方々が郷土をさぐる会の会員に加入してくださりありがとうございました。この会は多くの会員と賛助会員の皆さんに支えられてささやかに運営しております。会の趣旨に賛同いただき一人でも多くのかたの加入をお願いいたします。
(野尻記)
連絡先
〒071―0541
 空知郡上富良野町富町1丁目
 上富良野町郷土館内
    『かみふらの郷土をさぐる会事務局』 
             電話0167―45―3158番

皆様の投稿や、取材の情報・御意見をお待ちしております。

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 現在、13号・14号・15号・16号・17号・18号・19号(以上頒布価800円)、21号・22号・23号・24号・25号(頒布価1,000円)、上富良野志(明治42年発行の復刻版 頒布価1,000円)の在庫が僅少ですがあります。
 上富良野の歴史を伝える貴重な郷土史ですので、町外へ出ている親戚・知人・同級生の皆様に、お土産のつもりで贈ってはいかがでしょうか。
 お求めは、上富良野町公民館にてお願い申し上げます。

機関誌      郷土をさぐる(第29号)
2012年3月31日印刷      2012年4月1日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 成田政一