郷土をさぐる会トップページ     第28号目次

編集後記

編集委員長 野尻巳知雄

 三月十一日、東北関東地方に突然襲ってきた巨大地震と大津波は想像を絶する規模で、その悲惨な状況がテレビに刻々と映し出されています。被災された多くの方には心からお見舞い申し上げ、お亡くなりになられた方には衷心より哀悼の辞を申し述べたいと思います。
 特に福島原発の事故については世界中が注目しており、この原稿を書いている現在はまだ未解決のままなので、はらはら、どきどきしながらペンを走らせています。この本が発刊される時期にはどのように変化しているのか予測もたちませんが、何とか無事に収束されることを願って止みません。私たちも他人事のように考えないで今私達に何が出来るのか!やれることは何か!を考え、被災者にたいする応援とともに何時やってくるかわからない災害に対しても、非常用の準備を備えておく必要など、これを機会にぜひみんなで考えてみましょう。

 「郷土をさぐる誌」第二十八号をお届けします。
 二十八号は、例年連続で掲載をお願いしてきた「東京上富会」「札幌上富会」からのご投稿がありませんでした。遠くに住まわれている上富良野出身の方々の近況や上富良野での思い出などぜひご投稿願いたいものと念じています。

 郷土をさぐる会も今年で誕生から三十年を迎えるに至りました。この節目の年に北海道文化財保護協会からその活動に対して表彰されました。詳しくは会員の田中正人氏が「郷土をさぐる会三十年の歩み」で書いてくださいましたので、ご覧いただきたいと思います。

 表紙絵は昨年に引き続き上富良野在住の画家佐藤喬氏の作品の中から「旧中瀬宅」を使わしていただきました。氏は毎年札幌、旭川で個展を開いている外地域の学校に記念誌発行の編集に携わるなど、地域に根ざした制作活動を続けておられます。益々のご活躍をご祈念申し上げます。

 今年の二十八号には上富良野で起きた大きな事件の代表とも云える「昭和四十五年に上富良野農協で起きた三億円事件」と「昭和二十四年に起きた市街八町内の大火災」についての記事が投稿されています。

 上富良野農業協同組合『三億円大騒動』は、元参事で直接事件の処理に当たられた荻野昭一氏が「事件の発覚」から「組合の対応」「不正の手口」「事件の内容」「事件の処理」「民事訴訟」「刑事裁判」など、担当者の立場から細かに記述されており、「事件後の復興」に当った役員のかたがたの人物紹介など、多くの関連した資料も掲載しております。(但しプライバシーの問題から氏名の一部は割愛させていただいております。)

 昭和二十四年に起きた八町内大火災については、『八町内大火災の追憶』と題して当時食糧事務所に勤務していた大森金男氏が、火災の発生状況から物資の非難移動、上部機関への食糧特急電話を活用しての報告などについて記述されています。また、当日新聞で「当日は消防が不在でサイレンも鳴らなかった」といった報道に対して村役場が新聞社に送った真実の内容と抗議の文章も掲載されています。

 十勝岳の大噴火は大正十五年の噴火が広く知られていますが、昭和三十七年にも大噴火があり、そのときに遭遇した編集員の方々にそのときの状況を書いていただきました。
 『十勝岳大噴火の思い出』では成田政一氏、が当時電話機能と放送機能を有した「有線放送」の対応、と新聞記者を案内して爆発近くまで取材に行った事などが述べられています。
 同じ『十勝岳大噴火の思い出』の題名で西口登氏は、当時の建設課管理係長の立場で対処した仕事のかかわりから、十勝岳開発道路に従事していた自衛隊関係者との関わりと、爆発による避難の様子が描かれています。
 また、教育委員会に勤務していた岡田三一氏は『大噴火と学校僻地調査』について記述され、大噴火の噴煙がもくもくと上がっているさなかに清富小学校まで、道職員を案内したときの状況を記載しています。

 同じく昭和三十七年に起きた十勝岳大噴火の関係では、『十勝岳大噴火の写真』をテーマに、三原康敬氏が噴火の科学的な状況と、十勝岳噴火にまつわる会田久左ヱ門氏の新聞記事の紹介など新しい視点で噴火の模様を紹介されています。

 私の執筆した『ふらの原野開拓のあゆみ』は今回で五回目の連載になりますが、現在残されている資料から開放直前の「フラヌ原野の様子」や、入植に際して求められる「土地貸付申請」に必要な条件、「団体移住のための用件」などのほか、入植するために必要な環境整備で「道路・鉄道の敷設計画と国の予算」、「東中地区を通ると言われていた鉄道敷設計画ルート」は本当にあったのか、そして東中地区から「変更になった時期は?」東中を貫通する予定であった「旧十勝国道の計画と変更」について考察してみました。
 又人物紹介では、最初にフラヌ原野に資本投下しようとした人物とフラヌ原野開拓との関わりについて、「人見勝太郎」とはどんな仁部手であったのか、そしてふらの原野の開拓にどんな影響を与えたのかなどを記述してみました。そのほか、一番最初に貸付地の開拓に成功し付与を受けた「神田和蔵」についてと、草分に入植した三重団体の人々に開墾農地を分譲し、草分、日出地区の開発に貢献した「岡本一乃助」という人物についての紹介などを記載してみました。

 「石碑が語る上富の歴史」(その十六)は、中村有秀氏が『馬魂碑』との関わりから、上富良野の畜産事業の歴史を詳しく調べ上げ、今ではほとんど飼育されなくなった農耕馬や軍馬などについて詳細に記述されております。

 最後にこの本を手にしたひとりでも多くの皆さんのお力で、東北関東大災害のためにご協力下さり、被災者の方々が一日も早く復興に向けて立ち上がってくれることを祈るばかりです。
(野尻記)
連絡先
〒071―0541
 空知郡上富良野町富町1丁目
 上富良野町郷土館内
    『かみふらの郷土をさぐる会事務局』 
             電話0167―45―3158番

皆様の投稿や、取材の情報・御意見をお待ちしております。

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 現在、6号・7号(以上頒布価600円)、13号・14号・15号・16号・17号・18号・19号(以上頒布価800円)、21号・22号・23号・24号・25号(頒布価1,000円)、上富良野志(明治42年発行の復刻版頒布価1,000円)の在庫が僅少ですがあります。
 上富良野の歴史を伝える貴重な郷土史ですので、町外へ出ている親戚・知人・同級生の皆様に、お土産のつもりで贈ってはいかがでしょうか。
 お求めは、上富良野町公民館にてお願い申し上げます。

機関誌      郷土をさぐる(第28号)
2011年3月31日印刷      2011年4月1日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 成田政一