「郷土をさぐる会」三十年の歩み
上富良野町基線北二三号
田中正人 昭和二三年四月一五日生(六十二歳)
(文中敬称略)
受賞記念祝賀会の開催
北海道文化財保護協会(札幌市中央区)は、上富良野町郷土をさぐる会を道内の文化財保護及び保護思想普及に功績があったと認め、第四十六回の北海道文化財保護功労者として個人一名、郷土をさぐる会を含む三団体を平成二十二年十一月十五日、道庁赤レンガ庁舎にて顕彰した。
掲載省略 新聞スクラップ〜受賞記事
これを受けて郷土をさぐる会は十一月二十七日、上富良野町プラザ富山にて関係各位を招き受賞を祝う記念の祝賀会を開催した。
まず、成田政一会長が会の発足三十周年を目前に控えての受賞に至るこれまでの足跡を式辞として述べ、続いて向山富夫町長や増田修一教育委員長をはじめ、「郷土をさぐる会」を支える多くの関係者でこの受賞を祝った。
町長は祝辞の中で「町の歴史を掘り起こす皆さんの地道な活動に敬意を表し、この受賞を契機に尚一層かみふらのの歴史を後世に伝える努力をお願いします」と挨拶。
祝宴は進行役の三原康敬、芳賀美代子が進め「郷土をさぐる誌」の想いを列席した会員の方々から聞き出した。受賞記念祝賀会開催の様子からこれまでの郷土をさぐる会の歩みを振り返る。
郷土をさぐる会の発足まで
上富良野町郷土をさぐる会発足の大きなきっかけとなったのは、昭和十二年に生を受け、四十二歳の厄年を迎えた男性が丑年会を組織(会長平山寛)して戦前、戦中、戦後の生活の中から街の開拓時代の苦労話しや、町が発展して来た歴史的なものを小冊子とする事業に取り組み、昭和五十四年十二月二日「かみふらの物語」を発刊した。
これに刺激を受け「まだまだ埋もれている上富良野の歴史が沢山あり。冊子にして後世に伝えたい」と加藤清、岩田賀平の他、丑年会のメンバーでもあった野尻巳知雄と中村有秀は、町の有志にも働きかけ、昭和五十五年九月二十六日、郷土史の研究懇話会が開催され、郷土史研究者の組織について話し合いがもたれた。
同年十月十五日、上富良野町郷土をさぐる会の準備小委員会が開催され、組織化へと準備が進められた。
尚、丑年会はその後女性を加えて組織を「昭和十二年生まれ丑年会(会長平山寛)」と名称を改め拡大。「かみふらのふるさと写真集」を発行させ、「郷土をさぐる会」と歴史探索の認識を共有している。
初代会長金子全一
昭和五十五年十二月十六日、「郷土をさぐる会」の設立総会が開催され、事業計画並びに予算が承認され、初代会長に金子全一が選任された。
翌五十六年十月十日、郷土をさぐる誌第一号を壱千部発刊した。(以後の発刊は発刊事業参照)
会長となった金子全一はこの活動を長く続けて行く為に会員を募り、賛助会員制を導入し、資金的にも負担のかからないシステムを作り上げた。
昭和六十三年二月二十五日上川教育局長より「上川管内地域文化振興賞表彰を受賞する。この年、第七号を発刊する外、当町開基九十周年記念事業に協賛し、明治四十二年発行の「上富良野志」の復刻を行い、開拓の歴史を振り返った。
氏はマルイチ幾久屋二代目社長として昭和八年に就任後、三十代で村会議員となり数多くの公職や要職を歴任している。(詳しくは第二十号発行金子隆一著ふらの沿線初めての商店マルイチ幾久屋物語)「毎年一回発行して行きたいと」意欲にあふれ、平成四年、第十号の発刊を一区切りとして会長を辞任した。(平成十二年四月没)
掲載省略 写真〜第1号の表紙
掲載省略 写真〜上富良野志の復刻版の表紙
第二代会長高橋寅吉
氏は、会長として平成五年から十年迄務め、郷土をさぐる会の発足時から副会長及び編集委員として尽力した。
平成十年三月三十日発行の第十五号は氏の集大成となる開基百年記念協賛事業として上富良野における事始めを「かみふらの事始め物語」として刊行。四百ページに迫る膨大な情報を処理した。かみふらの歴史年表(開基百年記念町史編纂室)の発行にも会として協力。別冊号として「ふるさと上富良野昭和十一年頃の街並みと地区の家々」を併せて発刊する。
この別冊号はその後、「東中」「島津」「富原」「江花」「江幌」「里仁」の各地区が相次いで開拓百年を迎え、記念誌を発刊。変貌する地域の足跡を追跡する事に大きく貢献し、好評であった。
開基百年記念協賛事業としてこの他に「かみふらの女性史」も同日に発刊された。郷土をさぐる会々員の倉本千代子は女性史をつくる会の会長としてこの本を編纂した功績も大きいものがある。
高橋会長は東中郵便局の三代目の局長として昭和三十年〜昭和五十四年まで勤務し、公職も多い中、社会福祉協議会会長は昭和四十五年〜平成五年迄歴任。平成十年四月二十九日、郷土をさぐる誌第十五号発刊記念祝賀会を開催する等、会の運営発展に大きく貢献した。(平成二十年十二月没)
掲載省略 写真〜第15号表紙
掲載省略 写真〜地区が発刊した記念誌
第三代会長菅野稔
平成十一年、第三代目になった菅野稔会長は啓蒙活動に観点を置き、平成十三年四月五日、郷土をさぐる誌第十五号「かみふらの事始め物語」を町内各学校へ百九十冊贈呈した。
平成十三年六月十三日、三浦綾子記念文学館が開館三周年を迎えその記念特別企画展へ資料を提供し協力した。
平成十四年四月十日「徐福を語る」国際シンポジウムの開催を後援する。
徐福は中国の秦の時代の医薬を扱う薬方士。二千二百年前に始皇帝の命を受け、不老不死の仙薬を求めて航海に出たと「史記」に記され和歌山県にも渡来したと伝えられ、医薬、天文、占いのほか、漁業や農耕の技術などもその土地の人たちに指導し、住民に親しまれたといわれている。徐福に関して数多くの文献が出ており誰でも容易に調査できるので紹介は略する。
郷土をさぐる会でも町内の研修会で「徐福」とゆかりが深いとされる静修の神社を取り上げて散策し、見聞を深めた。
平成十五年四月十九日には郷土をさぐる会の創立二十五周年記念を祝う事業が実施され、郷土をさぐる誌第二十号の発刊の他、上富良野村史原稿復刻版の発刊を上下各五部作成し永久保存。会の創立二十五周年並びに第二十号発刊を記念する祝賀会を併せて開催した。又、第二十号より発行部数の減少とともに購読料の値上げに踏み切った。
平成十六年年一月十六日には上富良野町文化財保護に関する提言を積極的に行った。
尚、菅野氏は農業のかたわら昭和四十二年町議会議員に初当選。六期(二十四年間)連続上位当選し、昭和五十八年から平成三年までの間副議長として活躍している。現在郷土をさぐる会顧問。平成十六年、旭日双光章授賞。
掲載省略 新聞スクラップ〜第20号発刊を紹介した記事
掲載省略 写真〜原稿復刻版
第四代会長成田政一
平成十七年に第四代目として選任された成田政一会長は、平成九年監事。平成十一年から副会長として会の要職にあり、町職員として長きに渡り奉職し、昭和六十三年から収入役を務め平成五年退職している。
平成十八年、十勝岳大噴火泥流災害八十周年を迎える事から五月二十日〜二十八日迄十勝岳大噴火泥流災害八十周年回顧展を公民館大ホールで開催。
災害記念日となる五月二十四日には三浦綾子記念文学館館長の三浦光世氏を講師に招き「人生の苦難と幸福」と題して特別記念講演を実施した。
又同日、旭川の三浦綾子記念文学館でも「泥流地帯の世界」〜十勝岳爆発災害から八十年〜と題して回顧展が開催され、その資料を提供した。
六月六日には十勝岳大噴火の被災と復興を語る回顧の集いの開催。八月十九日、十勝岳爆発「泥流災害の町民探訪ツアー」を実施。八十周年回顧展は「土の館」でも展示公開された。
平成二十年四月発行の郷土をさぐる誌二十五号は特別号として発刊され、開基百年事業で整備したかみふらの年表を追加補足した年表も掲載した。
十二月十三日、北海道火山防災サミット2008in十勝岳〜防災と観光のまちづくり〜が美瑛町で開催。資料提供とあわせ十一月十五日には、北海道火山防災サミット2008in十勝岳〜災害教訓と減災まちづくりの歩み〜も上富良野町で開催。
翌平成二十一年三月十四日〜三十一日の間開かれた旭川市博物館第五十六回の企画展でも十勝岳噴火二十年〜火山噴火と災害から防災・減災に取り組む〜への資料提供がなされた。尚、十月九日〜翌平成二十二年三月三十日迄、三浦綾子記念文学館主催の〜小説「泥流地帯」はこうして生まれた〜が旭川市の同文学館で開催され、特別展示への資料提供を求められ協力。
平成二十二年度には三浦綾子とゆかりの深い上富良野町での開催も決定し、大正爆発の日時にあわせ、五月二十日〜五月三十日迄「三浦綾子記念文学館巡回展」が実現。資料の提供の他及び開催を支援し、大勢の来客でにぎわった。
郷土をさぐる会のこれから
会は毎年「郷土をさぐる誌」の発刊を目標に活動している。インターネットの普及と併せて本の内容をも掲載している。
発刊後間もなくネット上に本誌の内容を配信する為、購読に影響している現実もある。
ネット配信はプライバシーの侵害につながる事もあり、本誌の公開を有料化したり個人情報の提供に保護の網をかけるなどして今後対応する必要性もある。また、この事が本誌取材の困難な大きな一因にもなっている。
郷土をさぐる会の本誌内容が「個人史に偏っている」との批判の声も時折耳にするが、個々の歴史を振り返える事によっても見えてくる地域の移ろいも自然と反映される部分も見逃せないと感じている。
今後も授賞に恥じないよう会長をはじめとする役員及び会員、賛助会員の力を借りながら尚一層努力し継続し、郷土をさぐる会の総力をあげて地域に根ざす歴史の掘り起こしにこれからも積極的に取り組んでいきたい。
掲載省略 写真〜平成20年6月21日かみふらの郷土をさぐる会町内研修
掲載省略 名簿〜歴代役員名(幹事除く)
掲載省略 表〜郷土をさぐる誌発刊状況
別表 別冊発刊事業
発刊年月日 |
部数 |
価格 |
冊子名 |
備考 |
昭和63年12月1日 |
1,000 |
1,000 |
上富良野誌(復刻版) |
|
平成10年3月30日 |
1,500 |
1,200 |
「昭和11年頃の街並みと地区の家々」 |
上富良野町開基100年記念協賛 |
平成10年3月30日 |
500 |
800 |
かみふらの事始め物語 |
上富良野町開基100年記念協賛 |
平成10年3月30日 |
100 |
非売品 |
かみふらの歴史年表 |
上富良野町開基100年記念協賛町史編纂室 |
第27号迄の発刊内容
項目 |
数 |
項目 |
数 |
執筆者 |
延べ人数523人 |
総頁数 |
5,029頁 |
実人数230人 |
写真図面枚数 |
2,361枚 |
原稿枚数 |
8,228枚 |
発刊冊数(別冊含) |
26,160冊 |
最後になりましたが、発刊第一号からこれまでの間、本誌制作に尽力頂きました旭川土井デザイン事務所様に特段の深謝を申し上げます。
機関誌 郷土をさぐる(第28号)
2011年3月31日印刷 2011年4月1日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 成田政一