表紙絵 「十勝岳連峰」
日本画家 後藤 純男
風景画家は常に自分の求める風景を探し、各地を訪れる訳ですが、偶然に出会った良い場面というのは、機会は少ないものの、その分迷う余地が少なく比較的作品にしやすい面があります。
この作品「十勝岳連峰」はその逆で、この上富良野にアトリエを構え約十三年になりますが、その間私の今までの作品に比べ、かなり長い間描きたい対象として、見ていました。
朝日が昇ってから沈むまで刻一刻と変化する多彩な姿を見ていますと、果たしてどの場面を選択するのか、非常に難しいものがありました。
画家が描くのですから、自分の目で捉えたこの山ならではの魅力を引き出せないと絵にする意味がありません。
今なお活火山としてその偉容を誇る十勝岳連峰は、容易に人の存在を受け入れることなく、おそらく太古の昔から人々の信仰の対象になっていたことでしょう。
裾野に広がる木立ちは、開拓の手が入る以前の原生林を想い描き、山々の美しい稜線と横に走らせた鋭い線で、画面全体に緊張感を持たせ、山の持つ神秘性や厳しさを表現し、また、奥へと続く山々の頂きが悠大な時の流れを物語ります。
この姿が、ずっと変わらずにいることを願わずにはいられません。
プロフィール
昭和五年一月二十一日 千葉県にて生る 昭和二十一年 山本丘人に師事し、本格的に絵の勉強を始める 昭和二十五年 第五回院小品展に「田園風影」出品、初入選 昭和二十九年 第三十九回院展に「灯ともし頃」出品、院友となる。 昭和四十年 第五十回院展に「寂韻」出品、日本美術院賞、大観賞受賞、特待に推挙される。 昭和五十五年 日本美術院評議員となる。 昭和五十七年 中国・西安美術学院名誉教授となる。 昭和六十三年 東京芸術大学教授に就任。 平成三年 上富良野町にアトリエ開設。 平成九年 上富良野町に「後藤純男美術館」開設。 平成十二年 日本美術院理事就任 平成十四年 北海道上富良野町「後藤純男美術館新館」落成。
現在、千葉県流山市在住、北海道上富良野町、埼玉県松伏町・中国西安にアトリエを構え制作活動を続ける。