郷土をさぐる会トップページ     第15号目次

深山峠豊里郷土館

名所作りの一つとしてとりあげた事業に豊里郷土館がある。宮野孫三郎氏の発想で地域住民の協力によって作りあげたものである。世話人の方々に発送した案内状には次のように書かれている。
豊里部落には開拓以来七十有余年の時流れて、原始の大地は磨きに磨きがかけられて美しい田畑となりました(中略)然しこの美しい田畑は過去・父祖幾代及び先輩が飢と寒さに耐え忍び汗と血でかち得たもので、今なほこの地に先輩父祖の赤い血潮が脈々と流れている音が聞こえて来るのであります。現世の実情は、過去幾千年の長きに亘り築き上げられた文明文化が、現代科学の枠・原子科学によって過去の一切が、一瞬にして激変昭和生れの若き人達には昔日をしのぶに由なき世情と変りつつあります。過去は現在を築き、現在は未来に向って無限に創造発展するものであります。過去の先輩父祖がこの豊里に残された数々の尊い生活資料と数々の遺品が、今減失の寸前にさらされています。この時点を逸しますと悔を千歳に残すことと存じます。私達年代の者がこの尊い遺産の保存に力を注ぎ、次代を担う人々に継承し、そして未来永久に保存の道をはかることが明治大正の世に生を得た私達の重大な責務と使命であることに思いを深くするものであります。(後略)
宮野氏宅に集まった地域の人々の賛同を得て収集に励み昭和四十五年豊里郷土館が設置された。宮野氏の建物の提供をうけ深山峠の一つの名所として数多い資料を保存管理していたが、昭和五十年頃盗難にあい貴重な資料の一部を失ってしまった。建物の一部もこわされた為、里仁寿の家に保管していたが昭和五十三年三月、上富良野町郷土館が開設されたのに伴い、数多くの資料全部が寄贈された。一部が展示、残りは貴重な資料として整理、収蔵されている。
(菅野 稔記)

機関誌 郷土をさぐる(第15号)
1998年3月31日印刷 1998年3月31日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 高橋寅吉