郷土をさぐる会トップページ    上富良野百年史目次

5章 昭和初期と戦時下の上富良野 第4節 昭和初期の交通と通信

635-637p

4、通信の発達

 

 郵便局の営業状況

 上富良野郵便局の昭和戦前期における営業状況を『上富良野郵便局業務概要表』(上富良野郵便局蔵)によって見てみよう。まず上富良野郵便局が行なっていた業務の内容を概観しておこう。『業務概要表』の項目からそれを拾うと、通常郵便や小包郵便の引受・配達、電報、電話、為替、貯金、為替貯金、証券、年金恩給、保険、年金などがあった。

 また『上富良野郵便局々勢一覧表』(上富良野郵便局蔵)に付された「累年比較表」によって、昭和2年度から同16年度までの、その主な項目の最大、最小の実数を表5−28に示そう。

 この表を見ると、どの業務もほぼ年度を追って拡充していったことがわかる。しかしながら、この中で、最小の実数が昭和5〜7年度に集中しているのは、この時期に恐慌と凶作で人々の生活がかなり苦しくなっていたことの反映と考えられる。

 また、こうした業務をささえる従業員の配置、及び関連施設の状況を、昭和5年度から同17年度の『上富良野郵便局業務概要表』によって概観してみよう。

 まず、従業員には通信手、通信事務員、集配手(郵便部、電信部、保険部)、駐在者として通信工手などが置かれていた。人員は、通信手はほぼ男女1人づつ、通信事務員は男女ほぼ同数で計6人程度、集配手は郵便部に14人〜18人、電信部に1人〜3人、保険部には1人、駐在者は1人という配置であった。

 また、郵便の取集・配達は、市街地ではそれぞれ1日2回、市街地以外では1日1回行なわれ、郵便ポスト(掛函)は市街地にほぼ2カ所、それ以外の場所に8〜13カ所設置されていた。郵便切手類及収入印紙売捌所は、市街地に2カ所(昭和11年からは3カ所)、それ以外の場所に9〜11カ所置かれていた。

 次に、東中郵便局について見てみよう。まず、昭和に入って間もない昭和2年12月21日に、電信・電報の取り扱いが始まり、また、これまでは無集配局であったが、同12年11月30日から区域を3つに分けて集配事務の取扱いを開始している。

 

 表5−28 業務概要表

 

最大

最小

年度

実数

年度

実数

郵便物

通常

引受

15

564,801

5

231,514

配達

5

670,520

6

384,418

小包

引受

16

6,877

6

2,527

配達

12

9,086

5

3,182

為替

振出

口数

15

7,042

7

5,396

金額

15

232,778

7

77,151

払渡

口数

16

4,011

4

2,309

金額

16

142,940

10

50,960

貯金

新規預入人員

13

2,687

6

240

預入

口数

14

35,305

7

5,608

金額

14

501,094

7

142,174

払戻

口数

15

4,474

4

3,309

金額

15

394,728

6

152,586

年金

恩給

払渡

口数

16

169

5

62

金額

16

16,499

6

4,728

国庫金

受入

口数

16

571

5

45

金額

15

37,837

7

5,905

払渡

口数

11

699

3

340

金額

16

158,701

14

58,541

簡易

年度中

件数

15

1,130

3

95

保険

申込

金額

15

253,533

7

26,036

   表中の金額は、銭以下を切り捨てて円で示した

 

 電信・電話の利用拡大

 上富良野郵便局における電報の取扱いについて、『上富良野郵便局々勢一覧表』の「累年比較表」(大正11年度〜昭和16年度)によってその状況を見ると、大正期は大いに利用件数が伸びているのであるが、昭和に入ってからはやや状況が異なり、発信、着信ともに2年度から7年度までは連年利用数が減少し、8年度から11年度まではほぼ横這い、12年度から16年度にかけては逆に連年利用度が増加している。参考までにその実数を挙げると表5−29のようである。

 2年度から7年度にかけて減少しているのは、やはり、恐慌と凶作により、人々の経済活動の不活発が原因と考えられるとともに、電話の普及による影響もあったようである。また、12年度以降利用件数が伸びているのは、戦局の悪化にともなう、軍備拡張による経済の実態に合わない好況が原因と考えられている(『北海道の電信電話史』)。

 

 電報と同じく、「累年比較表」によって電話の利用状況を見てみると、その利用数はほぼ電報と同じ傾向を見せている。大正13年に飛躍的に利用数が増加して以降着実に利用数が伸び、昭和4年度から7年度にかけてやや減少及び停滞するが、12年度以降再び増加傾向を見せている。

 加入者数は表5−30のように、徐々に増加してはいるが、まだ決して多くはなかった。

 

 表5−29 電報累年比較表

年度

2

7

8

11

12

16

発信件数

4,950

2,619

3,014

3,611

4,685

6,789

着信件数

5,144

3,095

3,784

3,499

4,585

7,241

 

 表5−30 電話累年比較表

年度

加入者数

年度

加入者数

2

50

10

58

3

57

11

59

4

57

12

60

5

57

13

62

6

57

14

63

7

57

15

63

8

57

16

63

9

58

17

63

   (17年度は『上富良野郵便局業務概要表』による)