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2章 先史から近世までの上富良野 第5節 上富良野のアイヌ語地名

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2 川と地名

 

富良野川(A)

  フラヌイ(文政4年間宮図)。フウラヌイ(手控、戊午、山川図)。

  フーラヌイ川(道庁図)。フラ・ヌ・イ「臭(におい)・を持つ・所」の解釈を採る(佐藤)。

ベベルイ川(左B)

  ベヾルイ(手控、戊午)。へ、ルイ(山川図)。ベベルイ(道庁図)。ペ・ペッ・ルィ「水・川・激しくある」、またはペ・ピ・ルィ「水・石・激しくある」と再考(佐藤)。

ポロピナイ川(左C)

  ポロピナイ(道庁図)。ポロ・ピ・ナィ「多い・石・沢」(佐藤)。

  ポロ・ピ・ナイ「細谷川」ポロと言えども大川にあらず(永田)。

カラ川(左C)

  サッテキベヾルイ(手控、戊午)。サッテキヘヽルイ(山川図)。

  サッテキベベルイ(道庁図)。サッテク・ペペルイ「水滑れする・ベベルイ川」と解釈したい(佐藤)。

ヌッカクシ富良野川(左B)

  ヌブ(プ)カクシュフーラヌイ川(道庁図)。ヌプ・カ・クシ・フーラヌィ「泥炭原野・の上・通る・富良野川」(佐藤)。

  イワヲベツ(手控、戊午、山川図)。古名イワゥ・ペッ「硫黄・川(佐藤)。

デボツナイ川(左C)

  レホシナイ(手控、戊午、山川図)。ポンペポツナイ(道庁図)。

  ポン・ペポッ(ベベ・オッ)・ナィ「子である(小さい)・水々・豊かに群在する・沢」と解釈したい。即ち湿地帯に分派した支流川、多くの伏流水の湧出個所、水溜まりなど(がある意)と考える。『上富良野町史』に本川はチエポツナイ「魚の沢山いる川」の意とあることから、親川のホロベツナイ川を含め、更なる解釈再考の必要があるかも知れぬ。チェプオッナイ→チエポツナイ→レポツナイ→ペポツナイ→デポツナイか(佐藤)。

上富良野小学校付近の古川跡(右)

  フシコベツ(手控、戊午、山川図)。フシユコ・ペツ「旧・川」(永田)。洪水などで河流が移動した後の古川で、ライ・ペツ「死に川。滑れ川」ともいう。

  『戊午日誌』には「フシコベツ 川巾七八間、水乾きて少しもなし」とあり、数年前の河流跡と見られる。日誌、山川図では何川の古川か分からないが、手控『川筋取調図』にはイワヲベツ(ヌッカクシ富良野川)の古川としている。

ホロベツナイ川(左C)

  ポロペポッナイ(道庁図)。ポロ・ペポッ・ナィ「親である(大きい)・ペポッナィ」(佐藤)。

九号沢川(左B)

  コルコニウシュペツ(道庁図)。コルコニ・ウシ・ペッ「蕗の(葉柄)・群生する・川」(佐藤)

旭日川(左C)

  レリケウシナイ(手控、戊午、山川図)。レルケ・ウシ・ナイ「山の向こうに・ある(行く)・小川」(『地名アイヌ語小辞典』)。

九号沢川二股より川上

  クウナイ(手控)。クヲナイ(戊午)。クオ・ペッ「機弓(アマポ)(を仕掛ける)川」(永田)。フウラヌイの左支流がコルコニウシュベツ(B)であったが、現コルコニウシベツ川との二股以奥はクヲナイ(C、現九号沢川川上)と称していたものであろう。二股以奥の川名が元川と相違している例は、ほかにも多くある。

江幌完別川(右B)

  ホロカンベツ(手控、山川図)。エホロカアンペツ(道庁図)。

  エ・ホルカ・アン・ペッ 「頭(水源)が・後ろ向き・である・川」の意と解している(佐藤)。

エバナマエホロカンベツ川(右C)

  エパナマエホロカアンペツ(道庁図)。エ・パナ・オマ・エ・ホルカ・アン・ペッ「頭(水源)が・川下の方・にある・エホルカアンペッ」と解釈したい(佐藤)。

トラシ江幌完別川(右C)

  ホンカンベツ(ポンホロカンベツ、手控)。トラシ・エ・ホルカ・アン・ペッ「それ(けもの道)に沿ってのぼる・エホルカアンペッ.(佐藤)。

金子川(左C)

  ホロカンベツ(戊午)。ホロカンベ(ポロ・ホロカンベツの略、山川図)。「大きい・後戻りしている川(水源)」。

  松浦武四郎は、美瑛町美馬牛から南下し、ホンカンベツ(戊午)に来たが、本川の上流水源部を見ておらず、聞き取りで書いたため聞き違いがあったのか、現在の流路と異なる流路を記し、ホンカンベツ(戊午)、ホンホロカンベ(ポン・ホロカンベツの略、山川図)、「小さい・後戻りしている川(の水源)」との名を付している。流路はホンカンベツの方が長いが、川幅の大、小によって「ポロ」「ホン」を冠したものと思われ、また案内者は「後戻りしている川の水源である」という認識のもとに、ポロカンベツ、ホンカンベツと武四郎に教え示したものと考えられる。

無名小川(形ばかりの川、右B)

  シャリキウシナイ(手控、戊午、佐藤)。サリキ・ウシ「鬼茅・多き処」の川(永田)。

ピリカ富良野川(右B)

  ピリカフラヌイ川(国土地理院5万分の一図)。ワクカピリカフーラヌイ川(『北海道実測切図五万分の一図・上川』)。ピルカ・フラヌイ「(水が)良くある・富良野川」と解釈した(佐藤)。親川である富良野川は、川底が赤く水質も悪いが、この川は水も清くピルカ。富良野川と対比して名が冠された川であろう。永田方正はピリカ(pirika)と綴り、知里真志保はピルカ(pirka)とする。最近発行されている新しいアイヌ語辞典などには、ピリカ(pirka)と記述されている(佐藤)。ワクカ「水」、ピリカナイ「美川」川中美なり。故に名く(永田)。