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1章 上富良野町の自然と環境 第4節 上富良野の植物 62-64p

6 上富良野で採集できる代表的な食用キノコ類

 

 落葉針葉樹(カラマツ)林のキノコ

 なんといってもハナイグチ(花猪口)が筆頭にあげられる。俗にラクヨウと呼ばれ、広く親しまれているキノコ。8〜10月にかけて発生する。シロヌメリイグチ(白滑猪口)は同じ仲間でハナイグチと同所にも出るが、より幼齢の林の方に発生しやすいとされる。味はハナイグチよりかなり落ちるとして、いわば代用品的存在。

 

 針葉樹林のキノコ

 同じイグチの仲間でも、ヌメリイグチ(滑猪口)はこちらの林の方に出る。ハナイグチに似た風味で、8〜9月に発生。ハナビラタケ(花弁茸)は、トドマツ、エゾマツ、カラマツなどの大径木の根元や切株に発生する白く大型で、カリフラワーをもっと複雑な形にしたような奇妙なキノコである。俗にマツマイクケとの異名がある。風味はさっぱりしているが、香り高い。

 キノコの御本家として有名なマツタケ(松茸)は、8〜9月にトドマツ林やエゾマツ・トドマツ林の地上で採れる。ハイマツ林でも見られるという。本州ではアカマツ林に生える。道内では阿寒方面が産地として知られるが、十勝岳山麓にもあるという。モミタケ(樅茸)は、8〜10月にトドマツやアカエゾマツ林の地上に出る。菌輪(リング)をつくることもある。トドマツにはモミタケ、エゾマツにはオオモミタケが出るという説(?)もある。シロマツタケという異名があるが、そんなに美味という話はあまり聞かれない。また、英国系の人がこれを食べると、どういうわけか嘔吐や腹痛を起こすという不思議な菌類でもある。

 ムラサキシメジ(紫湿地・紫占地)は9〜10月、針広両林で見られる。しばしば菌輪をつくる。薄紫色の美しいキノコであるが、生食すると中毒を起こすこともあるという。スギヒラタケ(杉平茸)は9〜10月にエゾマツ、トドマツなどの古い切株や朽木に出る白いキノコだ。ハツタケ(初茸)は8〜9月にトドマツやエゾマツ、アカエゾマツ林の地上に出る茶色っぽいキノコで、中央が陥没する。季語として俳句にも詠まれている。だしがたいへんよく出るといわれる。

 キヌガサダケ(衣笠茸・絹傘茸)は高貴な印象のあるユニークな容貌のキノコで、名の通り、白く美しいレース状の網目のマントをまとっている。マントを広げきる前には、卵状の白い基部(つぽ)とチョコレート色の傘、砂糖細工のようなマントとのコンビネーションが、まるで洋風高級菓子を想わせる。ところが悪臭を放っており、これで昆虫類をおびき寄せ、胞子を虫の体につけて菌の分布を広げる。悪臭液を荒い流してスープなどにすると美味という。この仲間には他にスッポンダケなど数種がある。7〜9月、トドマツ林のほか、平地の庭園や芝生などにも出る。

 

 広葉樹林のキノコ

 キクラゲ(木耳・木水母)は、6〜9月にカエデ類やシナノキ類をはじめとする様々な広葉樹の倒木や枯木に群生する。

 シイタケ(椎茸)は6月および9〜10月、主にミズナラの倒木や切株、落ち枝などに出る他、コナラやハンノキなどの広葉樹、まれにトドマツやアカエゾマツにも発生する。人工栽培がさかんだが、野生のものは茶褐色〜黒褐色が強く、傘も大きい。ホンシメジ(本湿地・本占地)は9〜10月、主にミズナラの林の下などに輪をなして発生する。古来、「匂いマツタケ味シメジ」といわれ、好んで食された。人工栽培は現在不可能とされており、市場に「しめじ」の名で売られているのは、実はヒラタケの栽培品である。

 そのヒラタケ(平茸)は9〜11月、広葉樹や針葉樹の倒木、枯木、切株に出る。サクラシメジ(桜湿地・桜占地)は、9月にミズナラなどの雑木林に出る。

 マイタケ(舞茸)は9月、ミズナラの大木の根元に出るほか、オニグルミなどにもつくという。マツタケ、シイタケと並ぶ、いわずと知れたキノコ御三家のひとつである。シロマイクケ(白舞茸)の方は8〜9月に、やはりミズナラの大木の根元に出るが、マイクケよりも早く発生する。マイクケの方が茶味が濃い。味も落ちる。

 タモギクケ(楡木茸)は7〜8月、ハルニレやヤチダモの倒木、立木、切株に出る黄色の美しいキノコだ。割くと中は白色。基部で互いに癒合、ひとつの太い茎から珊瑚のように枝分かれして発生する。傘の中央が凹んでいる特徴がある。つばもつぼもなし。

 エノキタケ(榎茸)は別名ユキノシタともいわれ、積雪下でも発生する。5〜6月と10〜11月に広葉樹の生木、倒木、切株などに出る。茶色味と粘性の強いキノコで、白ちゃけた人工栽培ものとは全然ちがう印象である。味も野生の方がはるかに優る。おなじみのナメコ(滑子)も、6月と10月、カンバ類、シナ類の倒木や切株、枝、幹などに現れる。こちらもまた野生のものは栽培品よりずっと大きく、ぬめりも多く風味もよい。

 クリタケ(栗茸)も古来、親しまれてきた。9〜10月、広葉樹の腐木、倒木、土中の材などに出る茶褐色のキノコである。アミガサダケ(編笠茸)は5〜6月に林道の法面や林緑の路傍などに出る変わった感じのキノコ。傘の部分がデコボコとして、まるで蜂の巣か怪物を想わせる気味の悪い容姿だが、確かに食用になる。

 

 写真 タモギタケ

  ※ 掲載省略

 

 針広混交林のキノコ

 ナラタケ(楢茸)は、俗にボリボリと呼ばれ、8〜10月、広葉樹からカラマツ、トドマツの生木、切株、倒木、そして腐葉土の地上にも出る。

 コガネダケ(黄金茸)は9〜10月に林縁や道端などの地上に出る。俗名をキナコタケといい、実際、黄粉をかけたような黄金色をしている。表面は乾いており、触ると粉がつく。初めは白いが徐々に黄色になり、やがて茶色くなる。マツタケに似た味がするともいわれるが、中毒を起こす系統もあるという。

 タマゴタケ(卵茸)は8〜9月にトドマツ林、カンバ類、ミズナラ林などの地上に出る赤いキノコで、一見、毒キノコのベニテングタケに似る。白い卵状のつぼから出てくるためにこの名がある。欧州ではキノコの王様として重用されている。

 

 その他のキノコ

 ハタケシメジ(畑湿地・畑占地)は7〜9月に草地や林道、畑地などに出る。ホンシメジと酷似する。ホコリタケ(埃茸)は別名キッネノチャブクロ(狐ノ茶袋)という。9月に林地や草地、畑地に出る。まん丸い形をした、茶色い袋のようなキノコで、突くと頭から粉のような胞子を吹くことで知られる。一見、とても食べる気にはなれないが、若い時期には白く、この頃が食用になるという。