郷土をさぐる会トップページ     第10号目次

第十号発刊によせて

郷土をさぐる会会長 金子全一

郷土誌「郷土をさぐる」の発刊は、古老の元気な内に記録しておきたいと、加藤氏、岩田氏、千葉氏等の有志の人達の考えで始めたのであります。私は当地で生まれ育った老人と言うことだけで会長に推されました。
年一回の発行であるが、二、三回も出したら終りであろうと思って引き受けたのに、延々と遂に十号を刊行することになりました。振り返ってみれば良く続いたものと感慨無量であります。
その間編集の人達は、記事を書いてもらうと言っても古老の中には昔話を色々と聞かせてくれるのですが、書くことは苦手の人もおり、テープに録音し、それを整理して記事に書き直したり、又折角喜んで書いて下さっても文章が長すぎたり、読む人の立場や予算の関係を考えて、執筆者が気を悪くしないよう短くして頂く等、その手間や努力は大変なものであったと思います。
単価を安くするために、一回の発行部数を千部とし、更に値段も原価を割って六百円としました。それでも残部がでるのではないかと心配しましたが、長い間には殆んど売れてしまいました。更に当町開基九十周年記念事業に協賛して、明治四十二年発行の「上富良野志」の復刻を行い当町開村十周年目の様子を町民に知らせることができました。このように成功裡に本誌が十年を迎えることができたのは、偏に編集委員始め会員の並々ならぬ努力と又資金的に協力して頂いた賛助会員の方々、困難な仕事に惜しみなく尽して下さった教育委員会、それにも増してこの十年の長い間続けて下さった読者の方々に深い感謝を禁じ得ません。厚く御礼申上げる次第です。
加えて、このように多くの皆さんの御支援御協力のお蔭をもって、昭和六十二年、上川教育局長から郷土誌の編集発行に努め地域文化振興に多大の貢献をしたとし、地域文化振興賞の栄誉を得ましたことを、この十号発刊とともに重ねてお祝いし、この事業に関っていただいた皆さんに改めて感謝を申し上げたいと思います。
執筆者の中には後世に残したい貴重な記事を書いて下さったのに既に故人になられた方も沢山おられ、生きている間に記録ができて大変良かったと思います。又編集委員におかれても、上田美一氏や浜 巌氏のような立派な人が亡くなられたのは大変残念でなりません。
然し又新しく熱心な人達が次々と編集委員になられたことは本誌の将来に大変良いことで、これらは更に内容も充実して立派なものが出来ることと信じます。
この十年の月日に私も八十も中ばに達したので、これを機会に引退することにしました。
長い間御指導下さった諸兄に重ねて御礼申上げ、且つ亡くなった方々の御冥福を祈って退任の挨拶とします。誠に有難うございました。

機関誌 郷土をさぐる(第10号)
1992年2月20日印刷  1992年2月25日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会 会長 金子全一