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明治四十二年文部省検定唱歌
「我等が愛する北海道」について

岩田 賀平 明治四十三年十二月十日生(八十才)

私達の小学生時代、村の大きな行事に際しての旗行列や、運動会の入場行進に歌われた「十一州の鎮(しずめ)なる………」の唱歌の文句がなつかしく思い出される。あの頃からは、もう六、七十年もたった今では記憶にも自信がなくなってしまったが、今のうちに全歌詞を書き残したい思いにかられ、小学校の恩師故高橋 永先生をはじめ、先輩、友人やそれに北海道開拓記念館にもお尋ねしたが、若干の相違があって完成しないまま相当の年数がたってしまっていた。
それが幸運にも、元石狩支庁長の鈴木吉蔵氏から、この唱歌の作詞者の御令息と同期生の方で、札幌市資料館勤務の栃内和男氏を紹介して頂くことが出来て、同氏から明治四十一年文部省検定唱歌「我等が愛する北海道」札幌富貴堂発行の写本を御恵贈頂くことが出来て、ようやく完結となった次第である。

われらが愛する北海道
明治41年初版発行 明治42年文部省検定済
              石森 和男 作詞
              田村 虎蔵 作曲
1.十一州の鎮なる ヌタプカムウシベ峰高く
     われらが心をあらわして 国のもなかにそびえたり

2.その山かげをめぐりくる 石狩川は底清く
     われらが心をあらわして 大野が原を流れたり

3.望みはてなき国原は 沃野千里につらなりて
     四方をめぐれる海原は 三大漁場の一ぞかし

4.海に無限の富ひそみ 陸(くが)に無尽の宝あり
     陸(くが)と海とを開きなば いかに栄えん農商工

5.波路はるかに離れたる 占守(シュムシュ)の島のおくまでも
     人住みなれてすめらぎの 恵みあまねき御代なれや

6.汽船の煙立ちなびき 汽車の響きも断え間なし
     昔は遠き蝦夷が島 今はにぎわう新天地

7.春はさくらに咲きまじる こぶしの花もめずらしく
     秋はもみじに降りかかる 雪の景色もおもしろし

8.花には心なぐさめて 雪にはこの身鍛えつつ
   北門(きたと)のかため国のため 振いて立たんもろともに

9.いざや開かん十一州 われらが愛する十一州
     物産内に満ち満ちて げに帝国の富源ぞや

機関誌 郷土をさぐる(第9号)
1991年2月20日印刷  1991年2月25日発行
編集・発行者 上富良野町郷土をさぐる会会長 金子全一