◆十勝岳の成立ち |
上富良野からは、東に美しくつながる十勝岳連峰が望める。調和がとれた山並みは、一時期に一斉に誕生したかのように見えるが、およそ250万年をかけて徐々に造られ、現在の姿になった。 250万年前頃〜400万年頃までに火山活動で造られた地形は、風化や侵食で丘陵や台地になっていた。地球的な火山活動グリーンタフ活動が始まると、250万年頃に現在の前富良野岳と、十勝岳〜トムラウシの2か所で噴火が始まった。 170万年前頃〜富良野岳の基礎ができあがる。活動の中心は将来トムラウシ山ができる低地部に移り、その後近世まで活動が続いて堆積物を積み上げていく。こ の時期の造山運動でトムラウシから十勝岳の間が隆起し、黄金が原が造られた。 130万年前頃〜前富良野岳の南東で大麓山が盛んに活動して大きな山を造るが、活動はこの時だけで、現在は侵食されて旭岳と麓郷〜布礼別の丘陵地帯になって いる。マグマが上昇して将来十勝岳を形成する噴火活動と断層運動が始まった。 100万年前頃〜将来の十勝岳の下層を造る噴火口群は、爆発性の噴火を盛んに起して火砕流を発生させた。低みを埋めながら高さを増して連峰の基盤を造り始めた。 同じ頃、忠別岳からトムラウシを中心にした大雪山系でも、熔岩を重ねていく。 70万年前頃〜富良野岳からオプタテシケまでの火山列で噴火が続き、十勝岳連峰がほぼできあがった。大雪では活動域が北側へ移り、お鉢平周辺の火山郡が活動 を始めた。この後オプタテシケからトムラウシの間の噴火活動はほぼ停止する。 30万年前頃〜十勝岳連峰では、十勝岳を中心に上ホロカメットク〜美瑛富士に噴火が集中するようになり、他の活動はほぼ停止する。トムラウシも単独活動で高 さを増し、白雲岳から黒岳にかけた活動では大雪山塊を育てていく。 5万年前頃〜十勝岳連峰を含めた大雪山系の姿ができあがった。連峰で盛んに活動していたのは、十勝岳(摺鉢火口)、美瑛岳、上ホロカメットク山(安政火 口)で、トムラウシや御鉢平外輪(旭岳、熊ケ岳等)で噴火が盛んであった。 |
◆主な山の最終噴火活動年代〜K-Ar年代測定法◆ |
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◆近世の十勝岳火山活動年表◆ |
十勝岳連峰の火山活動は、有史になってからは安政火口と十勝岳の噴火口群の2か所だけで起こっている。 |
★(紀元前240頃) |
十勝岳グランド火口噴火(放射性炭素法) |
★(西暦1670頃) |
十勝岳中央火口丘噴火(放射性炭素法) |
☆1857(安政4) |
火脈燃立て黒烟刺上るを見る(松浦武四郎〜十勝日誌) |
☆1887(明治20) |
常に黒烟を噴出、近傍に降灰 |
1917(大正6) |
平山硫黄鉱業所、十勝岳火口周辺で硫黄採取事業着手。 |
☆1926(大正15) |
5月24日大噴火。泥流が発生し 死者不明者144名。 |
1947(昭和22) |
旧噴火口(安政火口)に硫気穴増加、噴気活発化。 |
1952(昭和27) |
昭和火口内に主噴気孔出現(50cm)、活動が始まる。 |
1953(昭和28) |
磯部硫黄鉱業所、十勝岳大正火口(新噴火口)で事業着手。 |
1954(昭和29) |
9月昭和火口内主噴気孔小爆発。(8.7m×8.0m) |
1955〜1958 |
昭和火口噴気活動活性化。噴気孔数増加。 |
1959(昭和34) |
昭和火口8月、11月噴気孔小爆発。 |
1960〜1961 |
昭和火口噴気活動活発。 |
1961(昭和36) |
旧噴火口(安政火口)で弱い水蒸気爆発。 |
☆1962(昭和37) |
6月29日中央火口丘で大噴火。死者不明者4名。 |
1964(昭和39) |
白金温泉に気象庁火山観測所設置。 |
1968(昭和43) |
10月の十勝沖地震後火山性地震異常多発。 |
1969(昭和44) |
62-2火口、噴気活動活発。 |
1970(昭和45) |
昭和火口、噴気活動衰微。 |
1985(昭和60) |
62-1火口、噴気活動活発。 |
1986(昭和61) |
62-1火口、地中温度520℃に上昇。 |
☆1988(昭和63) |
2〜10月有感地震多発。12月16日62-2火口噴火。 |
1989(平成元) |
1月/1・8・16・20・22・27・28(3回)日の延9回噴火。 |
1990(平成2) |
1988〜1989年の噴火以降、62‐1火口の噴気、地中温度が低下。 1月/小さな火山性微動観測 有感地震 十勝岳温泉 震度T 2月/小さな火山性微動観測 6月/小さな火山性微動観測 |
1991(平成3) |
振子沢噴気孔群の地中温度がやや低下。 2月/小さな火山性微動観測 |
1992(平成4) |
3月/有感地震 白金温泉 震度T |
1993(平成5) |
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1994(平成6) |
4月/小さな火山性微動観測 9月/火山性地震増加 |
1995(平成7) |
2月/62‐2火口噴気活動再開(1988年7月以来) 6月/大正火口磯部宿舎跡で弱い噴気を確認 7月/火山性地震増加 8月/火山性地震増加、顕著な火山性微動観測 11月/火山性地震増加 12月/火山性地震増加 |
1996(平成8) |
5月/火山性地震増加 6月/62‐1火口地中温度上昇 62‐0火口西側で新たな噴気 |
1997(平成9) |
5月/火山性地震増加 6月/振子沢噴気孔群地中温度上昇 振子沢噴気孔群噴気活動再開、62‐2火口新たな噴気 |
1998(平成10) |
1月/小さな火山性微動観測 2月/小さな火山性微動観測 4月/空振を伴う火山性地震観測 5月/小さな火山性微動観測 6月/小さな火山性地震増加 62‐2火口北西内壁に新噴気孔形成414℃ 62-3火口噴気活動再開(1992年9月以来) 62-0、62-1火口、振子沢噴気孔群で変色域、地熱域の 拡大 7月/小さな火山性微動観測 8月/62-2火口北西内壁の噴気温度上昇423℃ 62-0、62-1火口、振子沢噴気孔群で変色域、地熱域の 拡大 62-3火口東側亀裂で噴気活動再開(1991年9月以来) 山麓で広葉樹葉枯れ 9月/62-2火口底で熱泥水噴出(高さ約2m) 10月/熱泥水噴出継続 62-2火口から黒灰色の噴煙を2回噴出 62-2火口底の熱泥水噴出停止確認(10/13) 62-2火口北西内壁の噴気温度460℃ |
1999(平成11) |
1〜5月/夜間、62-2火口付近が明るく見える現象を度々確認 5月/空振を伴う火山性地震観測 6月/62-2火口北西内壁の噴気温度478℃ 夜間、62-2火口付近が明るく見える現象を度々確認 8月/62-2火口北西内壁の噴気温度477℃ 夜間、62-2火口付近が明るく見える現象を度々確認 9月/62-2火口北西内壁の噴気温度518℃ 夜間、62-2火口付近が明るく見える現象を度々確認 |
2000(平成12) |
1月/小さな火山性微動観測 夜間、62‐2火口付近が明るく見える現象を度々確認 2月/小さな火山性微動観測 5月/小さな火山性微動観測 6月/小さな火山性微動観測 8月/62‐2火口底で小規模な熱泥水噴出を確認 9月/現地観測(9/19)62‐2北西内壁の噴気温度537℃ |
2001(平成13) |
6月/現地観測(6/26)62‐2北西内壁の噴気温度471℃ 9月/現地観測(9/19)62‐2北西内壁の噴気温度452℃ |
2002(平成14) |
1月/小さな火山性微動を観測 3月/小さな火山性微動を観測 5月/小さな火山性微動を観測 6月/現地観測(6/18〜20)62-2北西内壁の噴気温度415℃ 9月/現地観測(9/17〜19)62-2北西内壁の噴気温度382℃ 小さな火山性微動を観測 |
2003(平成15) |
2月/火山性微動を観測(8日、25日) 8日は1988-89年の噴火活動以降最も大きい規模 臨時火山情報が発表された。 4月/小さな火山性微動を観測(1回) 5月/小さな火山性微動を観測(2回) 62-2北西内壁の噴気温度333℃(5/28地質研究所) 6月/小さな火山性微動を観測(2回) 調査観測(6/16〜21) 62-2北西内壁の噴気温度324℃ 7月/調査観測(7/21〜26) 62-2北西内壁の噴気温度327℃ |
◆十勝岳火山噴火の特徴◆ 現在の火山活動は十勝岳に集中しているため、今後の噴火も含めて、特徴がある程度わかっています。 |
● 噴火地点 十勝岳火山列は、北東−南西方向に火山体が配列しており、過去数千年間に噴火した地点は中央火口丘を含むグランド火口、摺鉢火口、北向火口、焼山などで、十勝岳山体周辺で発生している。今後20〜30年後に予測される噴火は、中央火口丘を含むグランド火口の可能性が高い。 ●噴火時期 十勝岳は過去約2000年にしばしば噴火し、幕末の探検家松浦武四郎が視認した1857年以来だけでも5回の大噴火が記録されている。この前4回についていえば約30年〜40年の周期で、昭和63年・平成元年の噴火は昭和37年噴火から27年目であり、周期性はある程度認められる。この周期性が保持されると仮定すれば、次期噴火は平成30年前後から可能性が高くなるが、この予測は必ずしも妥当ではない。 ●噴火様式 過去2000年の噴出物は、全てケイ酸が比較的少なく(50〜58%)、粘性が高めの苦鉄質安山岩で一定しているが、噴火の様式は次のとおり様々である。昭和63〜平成元年噴火は、(1)(3)合併のマグマ水蒸気爆発であった。 (1) 水蒸気爆発〜火山岩塊・火山灰の噴出 (2) 山体崩壊〜岩層雪崩・泥流の発生 (3) マグマ噴火〜火山弾・スコリア(黒色のガラス状質塊) |